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「賃貸不動産の相続税評価」

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不動産価格について

国税庁では、毎年7月1日に路線価が発表されます。路線価は毎年1月1日時点の公示価格などの80%程度を目途に発表され、相続税の土地評価などに使用していきます。

今年は路線価の発表と同時に新型コロナウイルスの影響により全国的に1月1日時点よりも地価が下落する可能性を想定し、補正措置の導入が検討されていました。

しかし、国土交通省より発表された都道府県地価調査によると、令和2年1月以降の半年間の全国平均の地価変動率は、住宅地で0.4%・商業地で1.4%の下落に留まりました。

それらの理由により国税庁では、1~6月までの相続等については、補正措置を行わないことが発表されました。
今後も予断の許されない状況に変わりありませんが、当初想定されていた不動産価格が思っていたよりも下落していなかったとも読み取れます。

経済活動が少しずつ回復してきて、色々と状況が少しずつ変わってきていますので、不動産購入が検討できる時期に来たように思います。

ここでは、投資用不動産を購入した場合、相続税の評価額がどのようになっていくか見ていきたいと思います。

不動産の相続税評価

投資用不動産を購入された場合、土地と建物の両方を取得していきます。

それぞれの相続税評価額は下記の通りとなります。

・土地相続税評価額
路線価方式:路線価 × 補正率・加算率 × 地積
倍率方式 :固定資産税評価額 × 倍率
※倍率方式は郊外の地域で路線価が定められていないときに採用される方式です。

・建物相続税評価額
固定資産税評価額 × 1.0

賃貸不動産の相続税評価

投資用不動産を賃貸されている場合、土地と建物はそれぞれ貸家建付地と貸家となります。賃貸している場合は、借主の権利が守られるため、所有者は自由に使うことができないため、通常の土地建物よりも評価が低くなります。

それぞれの相続税評価額は下記の通りとなります。

・貸家建付地相続税評価額
土地相続税評価額 × (1 – 借地権割合 × 借家権割合(30%) × 賃貸割合)

・貸家相続税評価額
建物相続税評価額 × (1 – 借家権割合(30%) × 賃貸割合)

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、住宅として使用していた土地、事業で使用していた土地、賃貸していた土地について、一定の要件を満たす場合には、80%または50%まで評価額を減額できる特例になります。

ここでは投資用不動産になりますので、賃貸していた土地に該当し、貸付事業用宅地等の小規模宅地等の特例が適用される可能性があります。

まずは、貸付事業用宅地等の小規模宅地等の特例の要件は下記の通りとなります。

・事業継続要件
件被相続人貸付事業を申告期限までに引き継ぎ、かつ、貸付事業を申告期限まで継続すること
・保有継続要件
その宅地等を申告期限まで保有すること

上記要件を満たした場合、全ての貸付していた土地に小規模宅地等の特例が適用できるわけではありません。特例を適用できる面積・減額割合が規定されています。

・限度面積 200㎡
・減額割合 50%

小規模宅地等の特例が適用される場合の評価額は下記の通りとなります。

・小規模宅地等の特例適用後の評価額
貸家建付地相続税評価額 × (1 – 50%)

投資用不動産を購入した場合の相続税評価の例示

実際に1億円(土地5,000万円・建物5,000万円)の不動産を購入した場合の相続税の評価について見ていきたいと思います。
便宜上、土地建物は路線価・固定資産税評価額が8割程度の価格になることを想定し、下記の条件により計算していきたいと思います。

・路線価 200,000円
・土地面積 200㎡
・建物固定資産税評価額 40,000,000円
・借地権割合 70%
・借家権割合 30%
・賃貸割合 100%
・借入金 1億円

まず、土地の課税される評価額は下記の通りとなります。

・土地評価額
200,000円 × 200㎡ = 40,000,000円
・貸家建付地評価額
40,000,000円 × (1 – 70% × 30% × 100%) = 31,600,000円
・小規模宅地等の特例
31,600,000円 × (1 – 50%) = 15,800,000円

次に、建物の課税される評価額は下記の通りとなります。

・建物評価額
40,000,000円 × 1.0 = 40,000,000円
・貸家評価額
40,000,000円 × (1 – 30% × 100%) = 28,000,000円

以上の通り、土地の評価額15,800,000円と建物の評価額28,000,000円がプラスの財産となり、借入金100,000,000円がマイナスの財産となります。

つまり、プラス財産43,800,000円に対して、マイナス財産100,000,000円になりますので、相続財産は△56,200,000円少なく計算することができます。

今回のケースは他に小規模宅等の特例の適用を受ける土地が無い場合など制約はありますが、1億円の不動産を購入する場合にこれだけの相続財産を少なくする効果があります。

実際には、不動産の状況などに応じて、例示以上の効果が出る場合もあります。将来の相続のために投資用不動産の購入を検討してみてはいかがでしょうか。



税理士 中村 武志

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