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「法人の生命保険活用について」

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生命保険の動向

2019年7月より法人向けの生命保険について税制改正が行われたことにより、今まで節税商品として販売されていた定期保険を活用した保険料の全額損金や2分の1損金を使って節税することが難しい状況となってまいりました。

これまで節税を中心に考えられていた生命保険について、今後、中小企業としてどのように活用していくべきか考えていきたいと思います。


借入金の備えとしての生命保険

法人の中には多額の融資を抱えている法人が数多くあります。中小企業の融資の場合、融資の契約の際、経営者の個人保証が求められる場合が大半となっています。

もし、経営者が死亡した場合や就業不能に陥ってしまった場合、どのようにその借入を返済していけばよろしいでしょうか。借入金の返済ができず法人が倒産したからといって、借入金は免除されるわけではなく、その借入金は個人で返済しなくてはなりません。

そんな時のために死亡保障・就業不能保障を補填できる保険に入っておくのが、一つの方法となります。死亡時・就業不能時に入ってくる保険金を基に借入金を返済していけば、残された家族・従業員に迷惑をかけずに法人を存続または解散していくことができます。
自社の借入の補填のために生命保険の加入を検討してみてはいかがでしょうか。

死亡退職金の活用としての生命保険

経営者に万が一のことがあった場合、残された家族の生活が心配になります。そんな時のために個人で生命保険に加入している中小企業の経営者もたくさんいらっしゃると思います。

死亡保険金が支払われた場合、「500万円×法定相続人の数」までは相続税の非課税となり、その金額を超えた死亡保険金に相続税が課税されます。

中小企業の経営者の方に活用していただきたいのが、死亡退職金などになります。経営者が死亡した場合、死亡退職金と弔慰金を遺族に支払うことができます。

死亡退職金が支払われた場合、死亡保険金と同様に「500万円×法定相続人の数」までは相続税の非課税となり、その金額を超えた部分にのみ相続税が課税されます。

弔慰金が支払われた場合、社会通念上相当と認められる金額であれば、相続税は課税されずに受け取ることができます。

その死亡退職金・弔慰金を支払う基となるお金の準備のため、生命保険の加入を検討してみてはいかがでしょうか。また、個人で多額の生命保険に加入している方は一部、法人の契約に切り替えることを検討してみてはいかがでしょうか。

福利厚生としての生命保険

会社を経営していく上で、新しい人材を確保することや現在働いている人材の流出を防ぐことが一つのテーマになってくると思います。

そんな人材確保や人材流出の防止のために会社としては福利厚生を充実させていくことが考えられます。福利厚生を充実させていくことで、従業員やその家族の生活が向上していきますので、新しい人材を確保するための要因や長い期間働いてもらえる会社になることができる要因となります。

そんな中、福利厚生の一貫として、従業員の生命保険加入があります。生命保険に加入しておくと従業員に怪我や病気があった場合に従業員の医療費の負担を軽減することができたり、従業員に万が一のことがあった場合に遺族へ保険金が支払われたり、会社が受け取った保険金を死亡退職金として会社から支払うことができます。

長く勤めてもらう従業員のために生命保険の加入を検討してみてはいかがでしょうか。

法人の生命保険の活用

法人の経営者からすると今まで生命保険というと節税のために加入するという認識が一般的だったと思います。そのため、昨年の税制が改正されたことに伴い、新たに法人での生命保険加入はしないという考え方を持つ方も多くいらっしゃると思います。

実際に生命保険は何かあったときに保険金等が支払われるように備えるもので、節税ありきのものではなく、実際の生命保険の保障に目を向けて、法人は生命保険の加入を検討していかなくてはならないと思います。

ただ、色々な心配に目を向けて生命保険加入をしてしまうと保険料が莫大となってしまいます。ご自身の優先順位に合わせて少しずつ将来のリスクなどに備えて法人での生命保険加入を検討してみてはいかがでしょうか。



税理士 中村 武志

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