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「消費税のインボイス方式の導入と影響について」

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消費税について

ここ数年、消費税について消費税率や仕組みに関する大きな税制改正が行われてきました。今後、消費税の計算がより複雑になっていきますが、その中でも大きな税制改正として、帳簿・請求書等保存方式から適格請求書等保存方式(インボイス方式)が導入されることとなりました。

ここではこれから始まるインボイス方式について、事前に少しでも知っていただければと思います。

消費税の計算方法

消費税の計算方法は主に下記のいずれかにより計算していきます。

  • 原則課税:売上にかかる消費税額-仕入等にかかる消費税額
  • 簡易課税:売上にかかる消費税額-(売上にかかる消費税額×みなし仕入率)


※みなし仕入率

第1種事業 卸売業 90%
第2種事業 小売業 80%
第3種事業 製造業等 70%
第4種事業 飲食店業(1.2.3.5.6以外の事業) 60%
第5種事業 運輸通信業、金融・保険業、サービス業(飲食店業を除く) 50%
第6種事業 不動産業 40%


適格請求書等保存方式(インボイス方式)

上記の原則課税により消費税を計算する場合、今までは免税事業者など相手先は関係なく、仕入等にかかる消費税を差し引いて、消費税の納税する金額を計算してきました。

令和5年10月よりインボイス方式が導入され、適格請求書発行事業者から交付を受けたインボイスに関する消費税を仕入れ等にかかる消費税として差し引いて、消費税の納税する金額を計算していくこととなります。

適格請求書発行事業者は登録制となり、税務署に「適格請求書発行事業者の登録申請書」を提出して、適格請求書発行事業者となることができます。また、適格請求書発行事業者は国税庁のホームページに公表されます。

インボイス方式の導入の流れ

令和5年10月よりインボイス方式が導入されますが、事前登録とその後の経過措置について、今後の流れを見ていきたいと思います。

・令和3年10月1日~令和5年3月31日  適格請求書発行事業者の事前登録申請
・令和5年10月1日~          インボイス方式の導入

※経過措置
・令和5年10月1日~令和8年9月30日  適格請求書発行事業者以外:80%を仕入等にかかる消費税として差し引ける
・令和8年10月1日~令和11年9月30日 適格請求書発行事業者以外:50%を仕入等にかかる消費税として差し引ける
・令和11年10月1日~         適格請求書発行事業者以外:全額を仕入等にかかる消費税を差し引けない

令和3年10月から適格請求書発行事業者に登録することができます。令和5年10月のインボイス方式導入時に適格請求書発行事業者となるためには、基本的に令和5年3月31日までに登録申請書の提出が必要となります。

また、適格請求書発行事業者になるためには、課税事業者になる必要があります。インボイス方式が導入されても経過措置として、免税事業者などの適格請求書発行事業者以外からの仕入等にかかる消費税は全て差し引くことができなくなるわけではなく、段階的に80%・50%と控除する金額が少なくなっていきます。

インボイス方式の影響

・納税者としての影響
原則課税により消費税を計算している場合、現状、相手方に関係なく、免税事業者などから仕入等を行った場合も仕入等にかかる消費税を差し引いて消費税を計算しています。インボイス方式が導入されると適格請求書発行事業者から仕入等を行った場合のみ仕入等にかかる消費税を差し引いていくことができます。

そのため、差し引いていくことができる仕入等にかかる消費税が少なくなるので、基本的に消費税の納税額は増加することが予想されます。特に仕入先・外注先などに小規模な法人・個人事業主が多く、相手先が免税事業者など適格請求書発行事業者以外の場合には、大幅に消費税の納税額が増加していきます。

・適格請求書発行事業者としての影響
適格請求書発行事業者は登録しなくてはなりません。また、国税のホームページで公表もされます。
インボイスに事業者登録番号などの記載が義務付けられ、相手先から求められた場合、インボイスの発行が義務付けられます。
このような事務負担の増加が予想されます。

・免税事業者の影響
納税者が免税事業者から仕入等を行った場合、その仕入等については仕入等にかかる消費税として差し引いていくことはできず、課税事業者から仕入れ等を行った場合よりも納税額が多くなる。そのため、納税者は免税事業者からの仕入等を回避する動機となり、その結果、免税事業者は事業者間取引から排除され、経営悪化に直面することが懸念される。

また、今まで免税事業者でも消費税を請求していくのが通常であったが、今後、納税者から消費税分の値引きを求められる可能性があります。そのため、免税事業者が適格請求書発行事業者に登録するためには、消費税の課税事業者となる必要があり、消費税の申告・納税をしていかなくてはならなくなります。

インボイス方式の事前準備

インボイス方式が導入されると立場に応じて、色々な影響が出てまいります。

ご自身が個人向けのお仕事をされている場合には、インボイスを求められることは少ないと思いますが、取引先が法人などの場合には、インボイスを求められることとなると思います。

ご自身の状況に合わせて、適格請求書発行事業者になるかどうか、導入後の消費税の増税など、事前に色々と把握しておく必要がありますので、この機会に検討してみてはいかがでしょうか。




税理士 中村 武志

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