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非居住者とは
現在のコロナ禍の状況では、海外赴任・留学・旅行など国外へ出ることが難しい状況となっておりますが、種々様々な理由で国外へ出ていかなくてはならない状況ができる場合があります。その時、海外赴任などで日本を長期で離れる場合、日本の居住者から非居住者となります。
基本的には日本国内に住所を有する方が「居住者」となり、国外に住所を有する方が「非居住者」となります。
日本の居住者は全世界所得課税として、日本国内の所得はもちろんのこと日本国外の所得についても課税の対象となります。では、非居住者に対する所得税の課税と確定申告についてはどのようになっていくのでしょうか。
非居住者に対する所得税の課税
非居住者は日本国内で発生する一定の所得(国内源泉所得)のみが課税の対象となります。
また、非居住者の国内源泉所得は源泉徴収されます。源泉徴収とは、日本国内で支払いをする者が源泉徴収義務者となり、支払時に所得税等を差し引いて支払う仕組みです。源泉徴収された所得税等は源泉徴収義務者が国等に納税します。
国内源泉所得
国内源泉所得とは、日本国内にその発生の源泉がある所得をいい、国内にある資産の保有・運用により生ずる所得、国内にある資産の譲渡により生ずる所得、国内の人的役務の提供に係る所得、国内での勤務に対する給料等などの所得がこれに該当します。
非居住者の源泉徴収
非居住者から源泉徴収される国内源泉所得には、以下のようなものなどがあります。
・土地等の譲渡対価・・・10.21%
日本国内の不動産を売却した場合に課税されるもので、土地等の譲渡対価が1億円以下で居住用に購入した個人から支払われるものについては、源泉徴収は不要です。
・不動産の賃貸料等・・・20.42%
日本国内の不動産を賃貸した場合に課税されるもので、不動産の賃貸料で居住用に賃貸した個人から支払われるものについては、源泉徴収は不要です。
・人的役務の提供事業の対価・・・20.42%
非居住者が国内おいて行う弁護士・公認会計士といった自由職業者や映画俳優・音楽家などの芸能人などの事業について課税されるものです。
・給与その他人的役務の提供に対する報酬、退職手当等・・・20.42%
海外赴任で非居住者となる場合の給与は基本的に国外で獲得した所得となるため、日本の所得税は課税されません。日本法人の役員報酬など日本国内で生ずる所得について課税されるものです。
非居住者の確定申告
非居住者は原則的に確定申告不要ですが、日本国内にある不動産から生ずる不動産所得などについては、国内源泉所得として課税の対象となります。源泉徴収は実際にかかった経費を考慮せずに徴収されているため、実際に確定申告をすることで所得税の還付を受けられる可能性があります。
非居住者が確定申告する場合には納税管理人を選任して確定申告を行っていきます。
納税管理人の選任
納税管理人は、非居住者が日本で申告が必要な場合に、その方のために納税事務処理を行う人のことを言います。納税管理人を選任する場合には、税務署に「所得税・消費税の納税管理人の届出書」を提出していきます。
非居住者となってしまった場合
海外赴任などで日本を離れて海外でお仕事をする場合、収入は海外勤務での給料となりますので、国内の所得ではなく、国外の所得となるため、日本では課税されることはなく、確定申告も必要ない人が大半になっていきます。
ただ、国内に賃貸用不動産などお持ちの場合、不動産から生ずる家賃収入などの不動産所得は国内の所得となってしまうため、確定申告の必要が出てくる場合もあります。また、家賃収入から源泉徴収されて家賃の支払が受け取っている場合など確定申告すると所得税が還付されることもありますので、きちんと納税管理人を選任して確定申告ができるように準備してから出国していくようにしていきましょう。
また、納税管理人を指定しない場合には、出国の日までに居住者の間に生じた所得について、準確定申告を行っていく必要があります。
ご自身が非居住者となっても、日本国内での収入がある場合には、国外に住んでいても日本での確定申告などが必要となってくる可能性がありますので、注意が必要です。
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