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リーブス倶楽部×DREAMJOB Innovation Lab「相続手続き(遺産整理)は、どこまで自分でできますか?」

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司法書士の本松です。
今回は、相続手続きについてのコラムです。

相続に関係する手続きには様々なものがありますが、今回お話するのはその中でも、遺産の承継手続きについてです。
より分かりやすく言うと、亡くなった方の預貯金、証券(株式・投資信託・国債など)、不動産、保険契約等の「名義変更」「解約」手続きです。




遺産の承継手続きには、大きくわけて4つの段階があります


第1段階 戸籍(相続関係)調査

まずは、故人の戸籍書類を収集して、相続関係を調査します。
具体的には、その方の相続人が誰なのかということを特定するための調査です。そのため「相続人特定業務」などと言われることもあります。

相続人が誰なのか(子、親、兄弟・甥姪など)によって必要な戸籍の範囲は変わってきますが、どのパターンであっても最低限故人の出生から死亡まで、すべての戸籍が必要になります「他に隠し子なんかいないから大丈夫ですよ。それでも必要ですか?」と聞かれることもありますが、必要です。

ご家族は故人の事情を知っていたとしても、これから手続きを行う金融機関や法務局は、その方のことを全く知りませんし、もちろん家族関係もまったく分かりません。そのため、必要な範囲内で戸籍を取集する必要があります。

第2段階 遺産調査

相続関係の調査が終わったら、次に財産そのものの調査を行います。場合によっては、相続関係調査と同時並行で行うことも多いと思います。

  • どこの金融機関に口座を持っているのか、その額は?
  • 生命保険はどのような契約内容になっている?
  • どこに不動産を持っている?
  • その評価額は?

などといったことを調査していきます。実はこれが結構大変だったりします。

まず不動産については、「どの市区町村に不動産を持っているか?またはその可能性があるか?」ということさえ分かれば、調査は可能です。

証券口座や株式については、まったく情報がなくても調査する方法があります。
保険契約については、保険契約者の住所に年に数回「契約内容のお知らせ」が届きますので、万が一把握できていない生命保険があったとしても、郵便物により判明することもあります(少々時間はかかってしまいますが)。

問題は預貯金です。

預貯金については相続人が故人の荷物を整理するなどして、通帳やキャッシュカードを探さないと、取引している金融機関を特定することができません(※もし故人名義の口座がある金融機関を照会できる方法があるならば、誰か教えていただけるとありがたいです。現時点ではそのような方法は無いものと思っています。)

支店や口座番号までは分からなくても、最低限、どの金融機関(ゆうちょ銀行、千葉銀行など)さえ分かれば何とかなるのですが、それすら分からないとなるとかなり大変な作業になりますし、最後まで分からないという結論にもなり兼ねません。

第3段階 遺産分割協議

相続人も特定できて、財産の全体像の把握できてきたら、いよいよ遺産分けの話し合い(遺産分割協議)に入ります。
(※相続人が1人のみのケースだと1人がすべてを相続するため、第3段階は省略できます。)

スムーズに話がまとまることもありますが、相続人たちそれぞれの思惑がありますので、なかなかまとまらないこともあります。中には代理人弁護士を立てて協議を行ったり、家庭裁判所で調停を行うこともあるでしょう。

それ以外にも、「揉めているわけではないけれど、どうやって分けたらいいものかよく分からない」というケースもあります。
(※このパターンが意外と多いです。その場合、2次相続対策や相続人たちの状況を考慮して司法書士がアドバイスを行うこともあります。)

全員の合意が取れましたら、協議の結果を書面(遺産分割協議書)にまとめて、相続人全員で署名・捺印を行います。

しっかり不備がない書式で作成したものであれば、金融機関や法務局(不動産)の相続手続きで使用することもできますし、相続税が発生している場合は、税務署への相続税申告時にも使用します。

第4段階 遺産承継

第3段階まで進みましたら、いよいよ実際の承継手続きに入ります。

不動産は相続することに決まった方への登記を行いますし、預貯金は解約して現金化するか相続する方に口座の名義を変更します。

証券関係は、故人名義のままだと売却できないので、処分したい場合は、いったん相続人名義にする必要があります。そのため、証券会社に預託している財産を相続する場合は、相続人が故人が取引していたのと同じ証券会社で口座を開設する必要が生じます(もともとその証券会社に口座を持っているならばその必要はありません。)。もし売却処分したいのであれば、相続人名義になってから売却することになります。

以上、相続の流れを簡単に説明しましたが、相続税が発生している場合は、相続税の申告も必要になってきますので、税理士に
相談する必要も出てくるかと思います。

さて、このような手続きについて「どこまで自分でできますか?」という質問を時々いただきます。

その場合、
「やろうと思えば全部できると思います。但し、膨大な労力と時間を費やす覚悟が必要です。」と回答しています。

このような手続きを行う場合、もちろん専門的な知識が必要になってきます。
戸籍はこれで足りているのか、書類の書き方はこれでいいのか、印鑑証明書の期限は大丈夫か、、、、

インターネットや書籍でいろいろ調べて手続きを行うことになると思いますし、法務局などにも何度も相談に行かなければならないでしょう。

仮にそれらの知識があったとしても、相続手続きはとても事務作業量が多い業務ですので、やはりかなりの時間がかかってしまいます。

例えば銀行で相続手続きをした場合、「午前中に窓口に行ったのに3時の閉店まで待たされた」などということも有り得ます。

また、金融機関の窓口の担当者は必ずしも相続に詳しいわけではないので、誤った指示をされることもあります。

その上、後日銀行から電話がかかってきて、「もう1度印鑑をいただかないといけないので再度窓口へお越しください」などと言われてしまうこともあります。

そのため、当事務所に遺産整理業務を依頼する方のうち、たまに「途中まで自分でやってみたけど、諦めた」とボロボロの状態で相談に来る方もいます。

もちろん依頼をするとその分お金がかかってしまいますので、時間の余裕があって、戸籍書類の解読(昭和初期までの戸籍は役人が筆で手書きしたものです。しかも非常に細かい文字で書いています。慣れていないと、そもそも「何と書いてあるか分からない」という状態になると思います。)や、いろいろや事務作業や調査が好きな方は、自分でやってみてもいいかと思いますが、そうでなければ、全部依頼してしまって楽をするのもいいのではないでしょうか。



ひまわり司法書士法人 代表司法書士 本松 紳司

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