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若手士業イノベーション協会×DREAMJOB Innovation lab「おひとり様の相続対策」

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おひとり様の増加とその行く末
近年、独身者が増えていますね、未婚独身者・バツのつく独身者・伴侶に先立たれた独身者等私の周りにも多様な独身者がおります。今回は、未婚独身者の相続の問題点について考えてみます。

以前は独身貴族という言葉がありましたが、先行き不透明な現在ではそれも死語に近く、老後や死後のことを考えると、決して薔薇色ではありません。元気なうちならともかく、誰もが認知症の可能性があり、元気なうちに老後と死後の準備をしておかないと取り返しのつかないことになります。生前の準備こそが、人生を充実したものにできるか否かの分水嶺とも言えます。

おひとり様の相続の帰趨

まず、おひとり様の問題としてご自身が亡くなった後の財産の行方に関心があると思います。おひとり様が亡くなった場合、どのように相続が行われるのでしょうか。

遺言書がある場合は、遺留分に注意は必要ですが、個人の意思は基本的に尊重されます。問題は遺言書がない場合です。この点、民法通りですと、両親がご健在の場合は未婚者ですから、財産は親が相続します。両親が亡くなっている場合には、兄弟姉妹が相続します(兄弟姉妹が亡くなった場合には姪や甥が相続します)。相続する相手がいない場合(特別縁故者がいない等)には、最終的に国庫に帰属します。

おひとり様の相続の問題点

さて、おひとり様が亡くなった場合どのような問題があるでしょうか。

一つには、おひとり様の特殊性として財産状況の把握が難しい点があります。何処に財産があるのか本人しか与り知らぬことが多いからです。

次に、親族に迷惑をかける可能性がある点も挙げられます。両親や兄弟姉妹が亡くなっている場合には、顔も知らない甥や姪が相続(代襲相続)する場合もあり、遺産分割協議がまとまらない場合には空き家放置となることもあります。その結果、甥や姪に税金が請求されることもあり、文字通り負動産になってしまいます。

これでは、縁のあるご親戚に多大な迷惑をかけてしまいますね。見知らぬ親戚が亡くなり莫大な遺産を承継する場合は「笑う相続人」ですが、この場合は、「泣く相続人」になってしまいます。

ご自身が亡くなった場合に、誰にも迷惑をかけないためにも生前から十分な備えをしておきたいですね。

おひとり様の相続対策

それでは、おひとり様の場合どのような対策を講じればよいのでしょうか。

一つには、遺言の利用です。遺言こそ、ご自身の財産をどのように使いたいのかを最も体現できるツールです。家族がいない人でもあしながおじさん等遺産を意味のある使い方、自分らしい使い方が出来ます。

遺言には、自筆証書遺言、公正証書遺言、秘密証書遺言があります。その中でも、せっかく作成した遺言が無効にならないよう公証人のお墨付きが貰える公正証書遺言がお勧めです。また公証人が保管してくれるので発見が困難であるという点も解消されます。おひとり様に適した遺言であると言えるでしょう。その際に確実に遺言通りに執行されるよう、遺言執行者を決めておくのも重要です。

次に、しっかりと推定相続人を把握することと財産目録を作成しておくことです。前者は戸籍を遡って調査することが必要ですが、結構大変な作業ですので専門家に依頼するのも検討の余地があります。こうした準備だけでも、遺された家族にとって相当程度負担が軽減されますので、ぜひ取り組んでみてください。

さらに、認知症になった場合に備えることも必要です。不動産を処分したり積極的に相続税対策をしたい場合に認知症になったら不動産売買は単独では不可能になります。意思能力を補完するために成年後見人つける必要があり、その場合でも裁判所の許可なくして不動産売買は出来ないことになります。認知症になる前に、家族信託を利用し、甥や姪等に財産管理を託する方法も検討の余地があります。

まだまだ、おひとり様が生前に備えるべき対策は多いですが、備えあらば憂いなし。誰にも迷惑をかけずに、人生を充実したものにするためには生前のしっかりした準備が肝要かと思われます。

是非早期に取り組み、充実した人生を実現してください。



唐司(とうのす)行政書士事務所 代表 唐司 誠

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