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【リーブス倶楽部×DREAMJOB Innovation Lab】不動産の生前贈与のメリット・デメリットは?(その2)

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前回は主に不動産を生前贈与した場合のデメリットについてお話ししました。
しかし、次の3つのパターンに当てはまる場合は、不動産の生前贈与を検討しても良いのではないかというお話もしたいと思います。

1.「かなりの」資産家の相続税対策
2.家族間の仲が最悪な場合の“争族”対策
3.相続人以外に贈与する場合

それでは、それぞれのパターンについて順に説明していきます。

ケース1.「かなりの」資産家の相続税対策

まずはケース1のパターンですが、前回話したとおり、不動産の生前贈与は、相続まで待って名義変更する場合に比べて、名義変更時に生じる登録免許税や不動産取得税の面で、税務上かなりのデメリットがあります。

しかし、その不動産が収益物件(賃貸マンション・アパート、貸地、貸駐車場など賃料を生む物件)だった場合、毎月発生する賃料は、当然その物件の所有者の収入になります。その収入に対して所得税も課税されますし、所有者が亡くなった場合の相続税の計算には、それまで得てきた賃料のうち手元に残っていた現預金も、組み込まれます。

賃料収入がそれほど大きくなく、生活費や物件の維持費などで賃料収入が費消されていくのであれば問題はありませんが、賃料収入がかなり大きい場合など、「所有しているだけで資産(賃料収入による現預金)がどんどん増えていく」状況であった場合、所有者の財産がどんどん膨らんでいってしまい、最終的に亡くなった際の相続税も増えてしまいます。
また、その他の収入を合わせた所有者の収入全体が高い場合は、所得税の税率も高くなってしまいますので、なるべく収入を下げて所得税を抑えたいというニーズもあるかも知れません。

そのような場合、例えば親から子へ収益物件の生前贈与を行った場合、その日以降の賃料収入は子のものになります。その後の賃料収入によって将来的な親の相続財産を膨らませ続けることもなくなりますし、親の所得税も安くなります(その代わり子の所得税は増えてしまいます。)。

この場合、不動産に対し相続時精算課税などを利用して生前贈与することが多いと思いますが、一時的に発生する登録免許税、不動産取得税などの税務コストや、贈与税や将来的な相続税の額などを総合的にシミュレーションして検討する必要があるかと思いますので、まずは税理士に各種の試算をしてもらってから考えるべきでしょう。
贈与してから親が亡くなるまでの年数が多ければ多いほど効果がありますので、もし贈与を決断するのであれば、早いに越したことはないと思います。

ケース2.家族間の仲が最悪な場合の“争族”対策

不動産の所有者が亡くなった場合、相続人全員で協議の上、その不動産を相続する人を決定します(いわゆる遺産分割協議です。)。しかし家族仲が悪い場合は話がまとまらないので、話し合いをしなくて済むように遺言書を残しておくという対策が必要です。

一般的にはこれで十分な対策とも言えますが、家族仲が最悪な場合は、さらに注意が必要です。

考えられるリスクとしては、「遺言書の書き換え」です。遺言書はその本人が亡くなるまでは、何度でも書き直すことができます。せっかく遺言書を作成しても、それを知った他の相続人が本人に強く詰め寄り、結果的にその意向に即した遺言内容に書き換えさせてしまう可能性もあります。

また、遺言書の内容によっては他の相続人の協力が必要になることもあります。不動産を共有で相続させるという内容の遺言書があった場合、不動産を取得する相続人全員で登記手続きをする必要がありますので、協力を得られないと、実体的には相続しているのにそれに即した名義変更(不動産登記)ができない、ということにもなり兼ねません。

一方、不動産の生前贈与は、所有者と贈与する相手との2者ですべての手続きが可能です。他の家族の同意は必要ありません。しかも遺言のように所有者が亡くなるのを待つ必要もなく、すぐに手続きができてしまいます。
税務上のデメリットはあるにしろ、確実に名義変更ができる手段と言えます。但し、将来の相続発生時に遺留分減殺請求を受けたり、特別受益に当たると主張されたりするリスクは残ってしまいますので、相続争いが生じた際に金銭的な負担は生じてしまうかもしれません。

3.相続人以外に贈与する場合

不動産を相続する場合は、相続人以外の人は相続できません。もしそれ以外の人の手に渡したいのであれば、遺言書でその人に遺す旨記載する(遺言者で相続人ではない人に遺すことを「遺贈」と言います。)か、生前に贈与や売買等で渡すしかありません。
遺言書で遺贈する場合は2と同様のリスクがありますし、売買の場合は普通の取引となってしまいます。なお、市場価値とかけ離れた安い金額で売買してしまうと、税務上、事実上の贈与と捉えられて課税対象となってしまいますので、注意が必要です。
贈与する相手は、相続人ではない親族(いとこや相続人ではない甥・姪など)、親族関係にない友人または法人(株式会社や一般社団法人など)、いろいろ考えられると思います。
他に相続人がいる場合は、ケース2と同様に将来的な遺留分減殺請求を受けるリスクもありますが、すぐに不動産を相手に渡せる確実な方法と言えるでしょう。

ケース2、3については生前贈与を行うよりも遺言書にて相続させるまたは遺贈するケースの方が一般的だとは思いますが、事情があってすぐに名義を変えたい場合やケース1の事情も関係している場合などは、不動産の生前贈与が有効な選択肢になり得ると思います。

これら以外のケースでも、物件の評価額が低額で納税額を計算してもそれほど大きな金額にならない場合など、生前贈与を検討しても良いケースはあると思います。生前贈与は、相続や信託などと違ってわかりやすい概念なので、ついつい深く調査せずに行ってしまいがちですが、その分いろいろな落とし穴が待っています。

まずは、専門家に相談してから手続きの検討を行うことをお勧めします。



ひまわり司法書士法人 代表司法書士 本松 紳司

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