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日本の高齢化は年を追うごとに進行していき、2060年には、人口は8674万人に減少するが、65歳以上の高齢者は全人口の40%となると予測されています。
高齢者の生活は、時代の流れに伴う医療や社会の変化とともに変わってきました。昭和20年代では、自宅で亡くなる方の割合は80%以上でしたが、最近は病院で亡くなる方の割合が75%近くになっています。そして、老人ホーム等の介護施設で亡くなる方も10%程度となり、家族に看取られて自宅で亡くなるというのは、かなり難しい時代になってきたと言えるでしょう。
また、法改正などの影響もあり、最近では病院は「医療」を行うべき場所であり、「介護」を行う場所ではないという考え方が強くなってきており、それほど重篤な状態ではない高齢者は病院に入院していられなくなってしまいました。
そのため、これからの時代は老人ホーム等の介護施設の果たすべき役割がどんどん大きくなっていくと考えられます。
高齢者の置かれている状況
厚生労働省のデータによると、家族から高齢者に対する虐待は年間1万7000件以上にも上ります。ニュースでは介護施設にて行われる虐待が大きく報道されるので、とても目立ちますが年間200件程度です。少ない数とは言えませんが、家族による虐待は、それらの100倍近い件数が報告されています。
もともと仲の良い家族だったとしても、介護者は肉体的にも精神的にもストレスが溜まりやすい状況に置かれますので、その結果、虐待に走ってしますケースもあります。そのため、介護が必要になった高齢者が家庭で過ごすことが必ずしも良いとは言えず、高齢者に最適な住まいを選択する必要があります。
しかし、老人ホーム・介護施設の中には素晴らしいサービスを行っているところから劣悪なサービス環境のところまで様々存在しています。もちろん、介護度・病状・予算・エリアによっても、選択肢が複雑に絡み合いますので、入居者と施設を正しくマッチングさせることは、とても重要だと言えます。
多種多様な老人ホーム・介護施設の種類
各老人ホーム・介護施設の特徴
・特別養護老人ホーム
自宅で暮らせず、家族の支援もない場合、包括的な介護サービスを受けながら暮らせる場所。入居費用が安いので、非常に人気があり、全国で約52万人の入居待ちが多く出ている。略して「特養」と呼ばれることが多い。
・介護老人保健施設
急性期病院と回復期病院で治療を受けたが、自宅で自力で生活できる状態には回復せず、自宅で自力で生活できる状態に回復することを目的とし、包括的なサービスとリハビリを受けながら短期間(おおむね3~6ヶ月)暮らせる場所。略して「老健」と呼ばれることが多い。
・介護療養型医療施設
急性期治療は終わり、リハビリ治療は終わっているが、在宅での生活が困難で、家族の支援もない場合で、病院でのケアのほうが望ましい場合、包括的なサービスを受けながら暮らせる場所。廃止が決まり減少傾向である。
・グループホーム
グループホームは、認知症を患っている高齢者が、専門の介護スタッフの援助を受けながら、少人数のグループで共同生活を送る施設。認知症の進行を緩やかにするように、料理や掃除など、自立した生活を送ることを目的にしている。
メリット
- ・認知症の方にとってリハビリをしながら生活ができる
- ・認知症の専門スタッフが常駐している
- ・少人数制のため、利用者にしっかりと目が行き届きやすい
- ・利用者はアットホームな生活ができる
デメリット
- ・施設と同じ地域に住民票がないと入居できない
- ・医療ケアには対応していない場合がある
- ・身体状況が悪化すると退去しなければならない場合がある
- ・共同生活が苦手な人は逆に認知症が悪化してしまう可能性がある
・介護付有料老人ホーム
介護付有料老人ホームとは、食事や清掃、身体介護から、リハビリ、サークル活動、レクリエーションなど、施設のスタッフによる幅広いサービスが受けられる介護施設。主に民間事業者によって運営されている。
メリット
- ・高級志向、医療重視、リハビリ重視など、ホームごとに特色があり、選択肢が多い
- ・重度の介護者でも受け入れることのできる施設がある
- ・医療対応度が高い施設が多い
- ・介護体制がしっかりとした施設が多い
- ・終身看取りしてもらえる施設がある
デメリット
- ・介護度が低い人が、介護度が高い入居者の多い施設に入ると介護のミスマッチが起こるので気をつけなければならない
- ・入居時費用に数千万円以上もかかることがあるほか、月額費用も高い場合が多い
- ・通所介護(デイサービス)などの外部の介護サービスを利用することができない
・住宅型有料老人ホーム
住宅型有料老人ホームとは、主に民間企業が運営し、要介護者や、自立(介護認定なし)・要支援状態の高齢者を受け入れている施設。生活援助や緊急時の対応、レクリエーションが受けられ、介護が必要な場合は、外部サービスを利用しながら生活できる。
メリット
- ・介護付きよりも利用料が割安である
- ・外部サービスを利用することで、軽度の要介護状態の方に向いている
- ・好きな外部サービスを利用できる
- ・元気な時はもちろん、介護が必要になった時も、外部サービスを利用して生活が続けられる
デメリット
- ・介護スタッフが常駐していない施設もある
- ・身体状況が悪化すると、退去しなければならない場合がある
- ・要介護度が高いと介護サービス費用が割高になってしまう
・サービス付高齢者向け住宅
国土交通省と厚生労働省が共同で管轄している高齢者の為の住まい。介護が必要な時は外部サービスを利用する。施設により異なるが、自立した生活を前提としている通常の賃貸住宅のようなところから、談話のできる共用スペースがあり有料老人ホーム・介護施設に近いようなところまで様々である。略して「サ高住」と呼ばれることが多い。
メリット
- ・介護付きよりも利用料が割安である
- ・外部サービスを利用することで、軽度の要介護状態の方に向いている
- ・好きな外部サービスを利用できる
- ・元気な時はもちろん、介護が必要になった時も、外部サービスを利用して生活が続けられる
デメリット
- ・介護スタッフが常駐していない施設もある
- ・身体状況が悪化すると、退去しなければならない場合がある
- ・要介護度が高いと介護サービス費用が割高になってしまう
このように介護施設の種類だけ考えても、選択肢が多く、なかなか選ぶのも大変です。そのため、入居する本人の希望や気持ちはもちろん、本人の家族も一緒になって施設選びをすることがとても重要になってきます。次回以降では、具体的に老人ホームを選ぶ際に抑えるべきポイントを探っていきたいと思います。
ひまわりライフサービス株式会社:リーブス倶楽部運営会社 代表取締役 本松 紳司
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