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コラム読者の皆様初めまして。
東京・名古屋・大阪の三都市を中心に企業税務・相続税務を中心に活動しております、内山公認会計士事務所の内山典弘と申します。
仕事柄、多くの中小企業経営者と接しておりますが、皆さん口を揃えておっしゃるのは「税金をなるべく払いたくない」ということです。
ご存知の通り法人には赤字でも発生する住民税と利益が出た場合に発生する法人税がございます。住民税・法人税を合わせると、資本金・利益の違いにもよりますが、おおよそ利益の30%ほどを税金として納めなければなりません。
人間とは不思議なもので「お金を払う」という「痛み」にはとても敏感です。苦労して作った利益を何とか守れないものか必死に考えます。試しに「法人 節税」と検索してみると、約614万件のページがヒットしました。
これだけ多くの情報が溢れており、なおかつ「節税」という響きはとても魅力的に聞こえます。しかし、節税したいからと言って会社のお金をむやみやたらに使うことは経営上正しい判断と言えるでしょうか? さらに、コロナ禍であるという時勢を踏まえれば、一円でも多くのお金を会社に残しておくことこそが正しい経営判断と言えるのではないでしょうか。
そこで当コラムでは世間でよく言われている法人の節税プランを取り上げ、本当に節税となるのか? について解説してまいります。こんな時代だからこそ正しい知識を持っていただき、難局を乗り切る一助になれば幸いです。
※当コラムでは中小企業の経営者を対象として解説しています。
少々長くなるので、次回と合わせて2回でお伝えしていきます。(次回は例題を挙げてご紹介いたします)

4年落ちのベンツは役に立たない
何回聞いたかわからないくらい登場する節税アイテム…と世間で言われている「4年落ちベンツ」です。結論から言ってしまうと4年落ちのベンツはおススメできる節税方法ではありません。にもかかわらず、節税アイテムであるかのような情報は多く発信されています。
ではなぜ、情報が溢れるくらい経営者は4年落ちのベンツを購入するのでしょうか?
減価償却の仕組み
ベンツに限らず、基本的に10万円以上する資産を購入した場合は減価償却を行うことになります。つまり、1,000万円の物を買っても一気にその年の費用として計上することは出来ません。
さらに、購入したものによって耐用年数(会計上定められた使用可能期間)が決まっており、法人の場合は基本的に定率で償却していくことになります。ちなみに今回登場するベンツが新車だった場合耐用年数は6年となり、以下のように処理します。
(例)1,000万円の新車のベンツを購入した場合
※1年目の期首に購入・納車されたとして計算
| 年数 | 期首帳簿価額 | 償却限度額 | 期末帳簿価額 |
| 1年 | 10,000,000 | 3,330,000 | 6,670,000 |
| 2年 | 6,670,000 | 2,221,110 | 4,448,890 |
| 3年 | 4,448,890 | 1,481,480 | 2,967,410 |
| 4年 | 2,967,410 | 991,114 | 1,976,296 |
| 5年 | 1,976,296 | 991,114 | 985,182 |
| 6年 | 985,182 | 985,181 | 1 |
新車として購入した初年度は購入価格1,000万円の内333万円分を費用として計上したとお考え下さい。それが2年目には約222万円、3年目約148万円、4年目約99万円、5年目約99万円、6年目約98万円となり、最終的に帳簿上は1円の価値となります。
普通自動車の場合、耐用年数は6年となりますので、1,000万円のベンツでも300万円の国産車でも期首(事業年度の初めの月)に新車で購入した場合は上記同様の処理をしていくことになります。
なぜ4年落ちが勧められるのか?
次はいよいよ本題の4年落ちの場合です。
4年落ちが勧められる理由は上記のように6年かけて償却することなく、購入した車の初年度登録年月と購入するタイミングによっては、購入した年度の内に全額を費用として計上することが可能なのです。詳しく見て行きましょう。
自動車の場合中古で購入すると、下記の簡便法によって購入した中古車の耐用年数を算出します。
法定耐用年数-経過年数+経過年数×0.2=耐用年数
※1年未満は切り捨てます。計算の結果が2年以内の場合の耐用年数は2年です。
今回登場する4年落ちのベンツの場合。
6年-4年+4年×0.2=2.8年となり(※実際の計算では年単位ではなく月単位で計算しますが、わかりやすくするため年単位の表記を使用しています)、1年未満の部分は切り捨てますので、耐用年数は2年ということになります。
さらに、減価償却を定率法で行っている場合、耐用年数2年の償却率は「1」となります。
償却率とは購入価格の内、費用として計上できる割合です。
そのため4年落ちのベンツは、先に述べたタイミングにもよりますが、全額費用として計上することが可能であるため、おススメの節税方法と言われているのです。
ちなみに、これが3年落ちになった場合、6年-3年+3年×0.2=3.6年となり、償却率は「0.667」となってしまうので、全額を一気に費用とすることは不可能です。
なぜベンツなのか?
よくよく考えてみれば、別にベンツでなくとも構わないのです。4年落ちの中古車であれば、上記の計算式に当てはめて償却していくことに変わりありません。
しかし、節税というとなぜかベンツが選ばれます。安全性やステータス性の高さ、デザイン、性能等々確かに素晴らしい車です。
ただ、それら車としての素晴らしさよりも値落ちしづらいという認識で選ばれている部分も存在しています。
ベンツは簿外資産!?
よくある手法として次のようなものがあります。
①利益が大きく出そうな年に4年落ちのベンツを購入して数年使用する。
②数年後、赤字が出てしまった年にベンツを売却する
③売却したベンツの帳簿上の価値は1円なので売却益が計上されるが、赤字と相殺できる。
④購入年度の節税も出来て、赤字年度は決算書上大きな赤字も回避できる。
「簿外資産」という言葉を聞いたことのある方もいらっしゃるでしょう。帳簿上は価値の無いことになっていても、実際には価値のある資産等のことを言いますが、急に現金が必要になった場合や、経営上どうしても資金投入せざるを得ない場合に、即換金できる資産を持つことでそうした事態に備えることが出来ると言われています。
ベンツは値落ちしづらいから何かあったら売ってお金にすればいい。
こうした考えからもベンツは選ばれてきたのでしょう。果たして本当にそうでしょうか? 4年落ちのベンツを数年後に売却した場合でも本当に値落ちは少ないと言えるのでしょうか?
私は車屋さんではないので正確な数字は出せませんが、リセールバリューという点で見た場合、一般的に国産車の方が優れているケースが多いように感じます。例えば、トヨタ自動車のランドクルーザー系やアルファードなどは値落ちしづらい車として有名です。簿外資産として節税しながら車を購入するという点だけに限って言えば、ベンツより上記車種の方が優れている可能性は非常に高いと言えるでしょう。
ベンツは必要か?
確かに車としての性能は素晴らしいものがあります。知り合いの経営者に見栄を張ることも出来るでしょう。その上、多少の簿外資産にもなります。しかし、4年落ちに限らずベンツはあなたの経営にとって「必要」な物でしょうか?
「欲しい」と「必要」は明確に線引きする必要があるのが経営です。
節税のことなど考えず、「頑張って働いてきたからそろそろベンツに乗りたい!」と思い、キャッシュフロー上経営が成り立つ状態が維持できるのであれば購入しても構わないと個人的には考えます。無論慎重に判断するべきですが…。
しかし、「節税になるみたいだし、一度乗ってみるか」くらいの間隔であればまったくおススメ出来ませんので、「必要」な時に「必要」な物を買うという当たり前の感覚を忘れないでいただければと思います。
※次回の記事で具体的な例をご紹介します。※




