DREAMJOB Innovation Lab

若手士業イノベーション協会×DREAMJOB Innovation lab「アフターコロナ」・「ウィズコロナ」の不動産価格

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新型コロナウィルスの影響により、2020年1~3月の実質国内生産(GDP)が前期比年率▲3.4%との発表が内閣府からありました。さらに、緊急事態宣言が発令された4月以降の影響が顕在化する4~6月期の成長率は前期比年率20%以上減少するとの予測もあります。
新型コロナウイルスによって日本経済は大きな影響を受けていますが、不動産価格はどのように推移するでしょうか。「店舗系商業地域」、「事務所系商業地域」、「住宅地域」の3つに分けて考察してみたいと思います。

店舗系商業地域

 まず大きな影響を受けているのが、飲食店舗やホテル等が多い繁華性の高い商業地域や、インバウンドの恩恵を強く受けていた商業地域です。こういった地域では以下のような流れで地価が下がると考えられます。

1.経済活動の自粛で売り上げが大きく減少することにより、固定費用を支払うことができなくなった店舗の閉店・撤退が増加し、空室率が上昇する。
2.空室率が上昇し、店舗の賃貸需要が減退することによって、賃料水準が下落する。
3.店舗撤退リスク、賃料水準下落リスクが上昇することにより、不動産投資市場における利回りが上昇する。
4.投資用不動産市場においては 賃料収入に基づく純収益÷利回り=不動産価格

といった式で不動産価格が形成されますが、この式の分子部分が小さくなり、逆に分母部分は大きくなるため、二重の効果で不動産価格は下がる。
特に、大都市圏の繁華性が高い高度商業地域やインバウンドの恩恵を強く受けていた商業地域では、客当たりの売り上げが高いことから、賃料水準が高く設定されていることが多く、テナントの負担が大きいため、早い段階で影響が顕在化すると考えられます。
また、上記のような純収益の減少と利回りの上昇という二重の効果により、下落率も大きくなるものと考えられます。

事務所系商業地域

オフィス市場の特性を考えると、コロナショックの影響は以下の流れになると考えます。

1.企業収支の悪化による採用人数の減少・リストラの実施、テレワークの普及による就業スタイル変化等の要因によりオフィスで就業人数が減少する。
2.企業が物的なリストラとして、オフィスの効率利用(共用部の省スペース化)を進める。
3.既存事務所の撤退、賃貸床面積の縮小により空室率が上昇し、賃料水準が下落する。
4.テナント撤退・賃貸面積縮小リスクが上昇することにより、不動産投資市場における利回りが上昇する。
5.不動産価格が下落する。

ただし、企業の事務所縮小や撤退にあたっては一定の意思決定期間が必要で、市場に大きな影響を与えるような大企業についてはその傾向が一層強いことから、実際に空室率が上昇してくるのは店舗系商業地域よりも後になると考えます。
また、オフィス需要は減少することはあっても、店舗需要ほどには増減の幅は小さくなっています。また、既存の賃貸借契約との関係上、新規賃料が一気に大きく下落する可能性は低いため、店舗系商業地域に比べると事務所系商業地域の不動産価格の下落は緩やかなものになると思われます。

住宅地域

住宅地の価格下落については、一般消費者の所得の減少が一番の原因となりますが、実際に一般消費者の所得への影響が顕在化するのは、企業収支の悪化よりも遅れます。そのため、住宅地域の価格下落は商業地に比べて遅れてくるものと予想されます。
商業地は店舗やオフィス等の賃料収入に基づくリターンを期待する投資対象としての性格を強く有しています。一方、住宅地はもちろん投資対象としての需要もありますが、多くは実際に居住するためのもので、実需的な性格が強くなっています。
住宅地は実需の下支えがある分、地価の変動は緩やかで、その上昇・下落の幅も商業地に比べると小さなものとなります。実際に平成8年以降の東京都区部の地価変動率を見てみると、それぞれ以下のような範囲内にありました。

商業地:▲20.3%(H8)~17.3%(H20)
住宅地:▲8.3%(H21)~11.4%(H19)

多摩地方では
商業地:▲14.0%(H8)~9.8%(H20)
住宅地:▲8.1%(H12)~7.9%(H20)

いずれのエリアにおいても商業地の方が変動の幅が大きくなっています。こういった傾向は東京都だけのことではなく、全国的な傾向となっており、やはり、住宅地域は商業地域に比べれば地価の下落リスクは小さいといえます。よって、今回のコロナショックの影響で地価が下がるとしても住宅地域は商業地域に比べると、その下落幅な小さくなると考えられます。

以上、コロナショックはバブル崩壊やリーマンショックといった大きな景気変動と異なる性格を持っていますし、世界を取り巻く情勢も大きく異なるものとなっています。そのため何とも予想が難しいというのが本音です。いずれにせよ、より広範囲から多くの情報を収集し、適切な分析をすることが重要かと思います。

かんべ土地建物株式会社 鑑定企画室 森田努


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