発行 あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
編集 DREAMJOB Innovation Lab
コラム読者の皆様こんにちは!
内山会計の内山でございます。
この記事では建設・土木業の方へ向けて、税理士・会計士としての立場から、専門的な知識・情報をわかりやすく解説してまいります。
今月から遂に建設業でも改正労働基準法が適用されました。世間では2024年問題と言われ物流業界を筆頭に早くからその対策について議論がなされてきましたが、建設・土木業でも同様に対策が進んできました。
その結果、いわゆる「サブコン」の存在が重要なものとなり、2024年問題を解決するための業界けん引役となるのではないか?という話も聞こえてきます。そこで今回のコラムでは「2024年問題が建設・土木業界にもたらす可能性」と題し、ここ最近の業界情勢について様々なメディアや弊所お客様からの情報などをまとめ、横断的に解説してまいります。ぜひ最後までお付き合いください。
主に経済金融ニュースを扱うブルームバーグによると、送電の九電工や半導体向けクリーンルームを手がける高砂熱学工業の株価は過去1年で2倍超に上昇しているそうです。製造業の国内回帰や円安による海外からの半導体工場進出など、勢いづかせるだけの理由はいくつかありますが、1年で2倍超の株価というのは素晴らしい成果と言えるでしょう。
また、既述の半導体工場など利益率の高い工事を優先して受注することでも成長しているそうです。
こうなってくると、本来は工事を受注しサブコンへ依頼する側であるゼネコンもうかうかしていられなくなってきます。工事を受注したけれども、依頼するサブコンが多忙で難しい… という事態になれば工事が進まなくなってしまいます。もはや、サブコンはゼネコンと対等の存在であると言えるでしょう。
改正労働基準法では特別条項付き36協定を結んだ場合であっても次のルールを守る必要があります。
・時間外労働は年720時間まで(休日労働を含まない)
・1カ月100 時間未満(休日労働含む)
・2~6カ月平均で80時間以内(休日労働含む)
・月45時間に時間外労働を拡大できるのは年6カ月まで(1年単位の変形労働時間制の場合は42時間)
工事の需要は無くならないどころか増えているのに、労働時間を守らなければならないという状況が起きています。法律ですので守ることは当たり前なのですが、ただでさえ人手不足の業界です。
これまでは大手ゼネコンを頂点としたピラミッド構造の業界でしたが、これからはいかに経験豊かな職人を集め、守りながら業務を行っていけるか? が問われることになるでしょう。もしかしたら、ピラミッド構造は一部で崩壊しているといっても過言では無いのかもしれません。
ちなみに、改正労働基準法に違反した場合は建設業の許認可にも関わります。では、遵守するために業界としてはどのような動きがあるのでしょうか?
人手不足ならば工期が長くなるのは当たり前のことです。しかし、業界では工期のダンピング(短い期間で請ける)が行われていました。
「○○か月でお願いします」
「無理です」
「じゃあ違うとこに頼むのでいいです」
「…いやいやそんなことおっしゃらずに…その期間でやらせていただきます」
という話は建設・土木業界以外でも多く存在すると思いますが、職人の事を考えると余裕を持った工期で受注するのがベストなのは言わずもがなです。そこで国としても「適正な工期設定等のためのガイドライン」を示しましたし、3月8日には政府が工期のダンピングを禁止する建設業法改正案を閣議決定しました。
業界として工期を適正にしようという動きが大きくなっているわけですが、最後にモノを言うのは「交渉力」であると個人的には考えます。
適正な工期を確保できるよう発注者と交渉する力はこれまで以上に必要になることでしょう。これは大手ゼネコンだけに限った話ではなく、下請け、孫請けすべての事業者に言えることです。また、「無理なものは無理」とはっきり断ることも重要です。
事故の無い現場を作って行くためにも「交渉力」の強化は喫緊の課題として取り組んでいくと良いでしょう。
2024年問題と言われた改正労働基準法ですが、「問題」ではなくこれをきっかけとして業界全体が変わって行く良い「チャンス」になれば良いと考えます。人手不足の現代では下請け・孫請けの力はますます強くなるでしょうから、資本力がない事業者と言えども大企業と渡り合える力は十分にあるはずです。
しかし、その力の裏付けは人手不足だけを理由にしたものではなく、技術力のある若手職人の育成やICTの活用など、これからを期待できる希望が裏付けとなることを願ってやみません。
今回も最後までお読みいただきありがとうございました。
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