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発行 あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
編集 DREAMJOB Innovation Lab

生命保険と相続税

内山会計の内山でございます。
今回は『生命保険と相続税』と題して、死亡保険金の非課税枠について解説してまいります。おそらく、一度は「生命保険を使うと相続対策になる」という話を聞いたことのある方もいらっしゃるかもしれませんが、制度の概要や具体的にどのような生命保険に加入すればよいのか? ということまで熟知している方は少ないのではないでしょうか。
基本的な部分から解説してまいりますので、どうぞ最後までお付き合いください。

生命保険と税金

生命保険文化センターの令和元年度「生活保障に関する調査」によると、日本人の8割以上は生命保険に加入しているという結果が出ていますので、当コラム読者の方も何らかの生命保険に加入されていることと思います。
生命保険は「発生する可能性は低いかもしれないけれども、万一発生してしまった時に(金銭的に)困らないように加入する」ものです。上記調査結果からもわかる通り、日本人はリスクへの備えが好きなようですが、いざ万一の事態が発生してしまった時、受け取る保険金の税金のことまで意識している方は少ないのでないでしょうか。

  保険契約者 被保険者 保険金受取人
Aさん Aさん Aさんの配偶者
Aさん Aさんの配偶者 Aさん
Aさん Aさんの配偶者 Aさんの子ども

上表は生命保険の契約者・被保険者(保険に掛けられている人)・受取人をケース別に示したものです。
一般的に死亡保険の場合①のパターンで契約されている方が多いと思います。この場合、Aさんが亡くなると配偶者に死亡保険金が支払われますが、この保険金は相続税の課税対象となります。厳密に言えば「みなし相続財産」というものになりますが、後程詳しく解説します。

②のパターンはAさんの配偶者が亡くなった場合、Aさんに保険金が支払われます。①のパターンと異なり、この場合は一時所得として所得税の対象となります。なぜかというと、Aさんが契約者(保険料を支払っていた人)ですので、「自分で払った保険を自分が受け取る」ということになり、受け取った保険金は自分の支払った保険料が元となって発生しているため所得として処理されます。

③のパターンは②と似ていますが、受け取る人がAさん自身ではなくお子さんです。「Aさんの支払ったお金が元となって保険金が発生し、お子さんが受け取った(お子さんがAさんからもらった)」ということになりますので、贈与税の課税対象です。

誰が契約者になるか? といったことで、万一の保険金へかかってくる税金は異なりますので注意が必要です。よくあるケースとして、結婚を機に夫婦それぞれが生命保険に加入し、契約者はどちらも夫というパターンは多く見受けられます。この場合、契約者の名義を中途変更することで万一の保険金を所得税ではなく相続税の課税対象とすることが可能となりますが、積立型の保険で名義変更時に一定の解約返戻金(110万円以上)がある場合、贈与として扱われることもありますので、既契約の名義変更を行う際は、加入されている保険会社に解約返戻金の有無と金額を確認しておくと良いでしょう。

死亡保険金は「みなし相続財産」

生命保険の保険金は受取人固有の財産です。「被保険者に万一のことが発生したら受取人に○○○〇万円支払います」という保険契約に基づいているため、「相続によって取得する財産(亡くなった方の預金や不動産)」とは異なります。要するに被相続人(亡くなった方)に帰属していた財産ではありません。しかし、亡くなってしまったから発生した財産であることは事実ですので、ほとんど相続財産と変わりないとも言えます。

このような財産を「みなし相続財産」と呼び、生命保険金や死亡退職金などが対象となります。下の図をご覧ください。

3,000万円の価値がある自宅と預金1,000万円を遺して亡くなった方がいたとします。
相続人は3人ですので相続税の基礎控除額は次の通りです。
3,000万円+(法定相続人×600万円)=4,800万円
よってこの家族は4,800万円まで相続税の基礎控除が使えるわけですが、亡くなった方は受取人を配偶者に指定した保険を掛けていました。(便宜上、契約者・被保険者は被相続人だったとします)

自宅3,000万円
預金1,000万円
死亡保険金1,500万円

合わせると5,500万円が相続財産となりますので、5,500万-4,800万=700万円の財産に対して相続税が課税されることになる…と思うかもしれませんが実際は異なります。死亡保険金には非課税枠が存在するのです。

死亡保険金の非課税枠

相続財産とみなされた死亡保険金ですが、受取人が相続人であれば以下の非課税枠を使うことが出来ますので、結果的に相続財産を減らせる(相続税を計算する元になる金額を減らせる)ことになります。
死亡保険金の非課税限度額=500万円×法定相続人の数
先ほどの例を再び取り上げてみましょう。

法定相続人は配偶者と2人の子どもですので3人です。
500万円×3人=1,500万円となりますので、受け取った保険金はすべて非課税枠の対象となり、相続財産から減らすことが可能となります。
すると残っている相続財産は自宅と預金を合わせた4,000万円となりますので、この家族の場合は4,800万円の基礎控除がありますので、相続税は非課税ということになります。

どんな保険に加入すればよいのか?

生命保険を使った相続対策を考えた場合、掛け捨ての死亡保険や定期保険はおススメできません。というのも、人間はいつ亡くなるかわかりません。定期保険は文字通り、定まった期間だけ保障する保険ですので、万一の際保険が切れていたということにもなりかねません。
さらに、相続対策で保険を活用する場合、預金や有価証券といった換金性の高い財産を生命保険へ移すことで成立しますので、掛け捨ての保険では相続財産を減らしたことにはなりません。

では、どのような保険商品が良いのか? ということになるのですが、一番ポピュラーなものは一時払い終身保険であると考えます。
「一時払い」とは契約時全ての保険料を支払う払い方となります。
「終身保険」は読んで字のごとく、亡くなるまで一生涯保証が続きます。

上図のような形となりますが、加入時に1,500万円近くのお金を保険料として支払います。イメージとしては銀行預金を保険に預け替えるような形でしょう。
預金で置いておけば相続財産となり死亡保険金の非課税枠は使うことが出来ませんが、形は似ていても一時払い終身保険は「生命保険」ですので、非課税枠を使うことが可能というわけです。
ただし、注意していただきたい点として以下の3つが挙げられます。

注意点①自由に引き出すことが出来ない

銀行預金と違い、一度預けた(契約した)一時払い終身保険からお金を引き出すことは基本的に出来ません。減額という手続きを取れば一部引き出しも可能ですが、契約した商品によっては損をする場合もあります。相続対策だけに捉われて、「使うかもしれないお金」まで保険に用いることは避けましょう。

注意点②外貨建てには為替リスクがある

低金利が続いていることもあり、円建て一時払い終身保険の販売を停止している保険会社も増えてきました。そこで米ドル建てに代表される外貨建て一払い終身保険が販売されて来ています。おそらく、皆さんのお知り合いに保険の営業さんがいらっしゃれば、勧められることになるでしょう。商品の仕組みとしては円建てと変わりありませんが、外貨建てゆえに為替リスクが存在します。保険金受取時に支払った保険料に対して大幅に減少しているまたは増加しているという可能性はありますので、注意していただければと思います。

受取人を誰にするか?

一般的には配偶者にするケースが多いことでしょう。別の機会に解説しますが、配偶者には相続税の配偶者控除という大きな控除枠が設定されていますので、受取人は配偶者にしておくことが無難と言えます。

しかし、子どもにも大きな財産を遺したいという方もいらっしゃることでしょう。生命保険には受取人を複数指定することも可能ですので、配偶者25%・長男50%・次男25%などの設定も可能です。ただし、保険金は受取人固有の財産ではありますが、一定の相続人が他の相続人と比べて、高額の保険金を受け取った場合、特別受益とみなされ遺留分で揉めてしまう可能性も存在しますので注意が必要です。

「いくらまでなら揉める可能性は少ない」というのは家庭ごとによって違いもありますので、受取人指定や割合等でお悩みの場合は、保険へ加入する前に専門家へ相談されることをおススメいたします。

今回のまとめ

「非課税枠があるからすぐに保険屋さんに聞いて加入しよう」と思ったかもしれません。確かに、生命保険を活用することで相続財産を減らすことは可能です。死亡保険金は受取人固有の財産ですので遺したい方に遺したい分だけ渡せる可能性も高いです。

しかし、相続対策で一番初めに取り掛からなければいけないことは、自分の財産がどのくらいあって、誰にどう使っていってほしいかをよく考え明示しておくことであると私は思います。そのためには遺言書の作成や財産目録の作成といった作業が必要になりますが、その過程で初めて生命保険の活用という手段が登場するのであって、相続対策=生命保険加入では断じてありません。

人や家族の状況によって取れる手段は違いますので、くれぐれも安易な保険加入はしないで頂ければと思います。当事務所では無料相談も承っておりますので、相続対策でお悩みの際はどうぞお気軽にご連絡ください。

税理士法人内山会計 公認会計士・税理士 内山典弘

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