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発行 あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
編集 DREAMJOB Innovation Lab

『暦年贈与』について

こんにちは。
内山公認会計士事務所の内山でございます。

今月も相続対策のお役に立つ知識を、専門家としての立場から分かりやすく解説させていただきます。

2021年がスタートしましたが、昨年から続くコロナは未だ収まる気配を見せず、地域によっては外出自粛も呼びかけられている状況です。例年のように帰省する方も少なかったようですので、家族間で相続について話し合う機会も減っているのかもしれません。

そこで新年最初のコラムでは『暦年贈与』について基本的なことから、注意点まで解説していこうと思います。相続対策の一環として、生前贈与を行っている方も多くいらっしゃるかもしれませんが、中でも毎年少しずつ贈与を行っているケースは割とポピュラーだと思います。これを暦年贈与と呼びますが、注意して行わないとせっかくの相続対策がマイナスに作用してしまうこともあるのです。

生前贈与を検討されている方は、どうぞ本コラムを参考にしていただき次世代へ有効な方法で財産を繋げて行っていただければと思います。

暦年贈与とは?

冒頭でもお話した通り、暦年贈与とは毎年贈与税の非課税範囲内で自分の財産を子どもや孫に対して贈与していることを指します。
贈与税は財産を貰った側(受贈者)が納税すべき税金ですので、財産をあげる側(贈与者)は何人に財産をあげようとも贈与税はかかりません。

貰った側が納税することになる贈与税ですが、110万円以下であれば非課税になるということをご存知の方も多いことでしょう。ちなみに、祖父から50万円、父から60万円という贈与を受けた場合、もらった側の方はその年に受けた贈与の合計額に対して贈与税は算出されますので、2人から貰った場合でも合計で110万円以内であれば非課税です。逆に祖父と父それぞれから110万円貰った場合は合計で220万円となりますので、贈与税を納めることになります。

なぜ贈与を行うのか?

贈与税の課税対象額
(110万円控除した後の金額)
贈与税の税率と控除額 相続税の課税対象額 相続税の税率と控除額
200万以下 10%控除無し 1000万円以下 10%控除無し
400万以下 15%控除10万 3000万円以下 15%控除50万
600万以下 20%控除30万 5000万円以下 20%控除200万
1000万以下 30%控除90万 1億円以下 30%控除700万
1500万以下 40%控除190万 2億円以下 40%控除1700万
3000万以下 45%控除265万 3億円以下 45%控除2700万
4500万以下 50%控除415万 6億円以下 50%控除4200万
4500万超 55%控除645万 6億円超 55%控除7200万

*贈与税は直系尊属への贈与(特別税率)で表記しています。

上表はよく比較されることのある、贈与税と相続税の税率表です。
贈与税の基礎控除は110万円。
一方相続税の基礎控除は「3000万円+法定相続人の数×600万円」となりますので、上表はそれら基礎控除を行った後に残った金額に対して適用されます。

贈与税の例)※直系尊属からの贈与を想定しています
貰った金額400万円-110万円(基礎控除)=290万円
290万円×15%-10万円=33.5万円となり、400万円の財産を直系尊属から贈与された場合、33.5万円の贈与税が発生するというわけです。

「相続税の方が課税対象額が大きいからわざわざ贈与する意味ってあるの?」
こう思った方もいらっしゃるかもしれませんが、贈与と相続はその性質が異なります。贈与は財産をあげる側が生きている限り、いつでも何度でも出来るのに対して、相続は一度きりです。つまり、小分けでもらうものと、一括でもらうものの税金を比べること自体そもそもおかしなことではあるのですが、贈与の効果として将来的に発生するであろう相続税を計算する元になる財産を事前に減らしておくことが出来るというものがあります。
事前に財産を減らしておけば、それだけ低い税率で相続税も計算することになりますので、後々のためになるというわけです。

では、事前にいくらくらい生前贈与を行えば、相続税の節税となるのか? という話になるかもしれませんが、個人ごとに現在お持ちの財産を正確に把握し、シミュレーションする必要がありますので、詳しくお知りになりたい場合はお気軽に当事務所までご連絡ください。

注意点として、相続税の基礎控除内に財産が収まっている場合、贈与の効果はありません。早いうちに次世代へ財産を渡せるという点や、渡したい人に自分が元気なうちに財産の一部を渡せるという点は人によってメリットとなるケースもありますが、将来的に相続税が発生しない場合、節税という点では効果の無いものになります。

暦年贈与と相続時精算課税制度

暦年贈与と比較される制度として相続時精算課税制度というものも存在します。この制度は一生の内で2500万円までは贈与時に贈与税がかかりません。
ただし、財産をあげる側の方が亡くなった時、過去の贈与を持ち戻して(贈与した分も亡くなった時に持っていた財産にプラスして)相続財産に計上するという制度です。

また、一度選択してしまうと暦年贈与は使えなくなってしまいます。詳しく解説するのはまたの機会としますが、暦年贈与は非課税範囲内であれば税金がかからない。相続時精算課税制度は税金を待ってもらっているという認識をお持ちいただければと思います。

暦年贈与の注意点

ただ単に毎年110万円を贈与すればよいというわけではありません。場合によっては次に解説する連年贈与とみなされて、せっかくの相続税対策もまったく無意味なものとなることも存在します。暦年贈与を行ってみようと思われる方はこれから解説する注意点を参考にしていただければと思います。

連年贈与

毎年1月1日に親から子へ100万円を贈与していたとします。同じことを10年繰り返した場合、合計で1000万円の贈与となりますが、年間の贈与は100万円であり110万円の基礎控除内であることから非課税…なのですが、この場合税務署は「最初から1000万円贈与する計画だったのだろう」とみなすことがあります。このような状態を連年贈与と呼び、贈与税が課税される可能性があります。
連年贈与とみなされないためには…

1.贈与する金額を毎年変える
2.贈与する時期を毎年変える
3.少額の贈与税を納税する
4.贈与しない年も織り交ぜる

このような対策を取れば、連年贈与とみなされる可能性は低くなります。1.2.4に関しては解説不要だと思いますが、3. 少額の贈与税を納税するというものは、あえて110万円を超えて、例えば120万円贈与する年も作るということです。
120万-110万=10万
10万×10%(税率)=1万円
1万円の贈与税が発生しますが、贈与を受けた年の翌年2月1日~3月15日の期間に贈与税の申告し、納税します。例え1万円といえどもきちんと申告し、納税しているわけですから、税務処理として何らおかしなことはありません。

また暦年贈与を行う場合にはたとえ親子間の贈与であっても契約書を用意すると良いでしょう。契約書の例も作成しましたので、下記をご覧ください。

贈与契約書を作る

親子間の贈与であっても契約書の作成は重要です。あげる側・もらう側が双方合意の上で成り立つ契約であることの証にもなりますので、暦年贈与の場合は毎年作成し、それぞれ署名捺印する必要があります。

贈与契約書に決まった書式はありませんが、誰が誰に何をいつあげるのか? あげる条件があればその条件。あげる物の引渡し方法。あげる方・もらう方それぞれの住所と名前。贈与する日時が記載してあれば良いでしょう。
現金の場合は原則銀行振込を利用し、手渡しでの贈与は避けた方が無難です。なぜなら、振込であれば証拠も残りますし、確実に名義の違う通帳にお金が移動することになるわけですから、誰がどう見ても贈与は成立しています。
ただし、一点注意していただきたい点として名義預金があります。先の例で甲(父)が乙(子)に贈与する場合、お子さん名義の通帳と印鑑の管理はお子さん自身が行う必要があります。万一、父がお子さん名義の通帳と印鑑を管理していた場合、名義預金とみなされ、贈与したとは認められないケースも存在します。
贈与を行う際は、できれば専用の通帳を作成し、もらった側の方がそれを管理するという方法がおススメです。このような手法を取れば、贈与以外のお金のやり取りはその通帳に出現することはありませんので、贈与の日時や、お金のやり取りも一目瞭然です。
また、贈与でよくあるケースとして「あげたことにする」というものがあります。先の名義預金などがその例ですが、名義上はあげたことになっていても、実態としてもらった側の自由に出来ない状態では贈与とは言えません。
当然、税務署にも否認される可能性が高くなりますので、贈与を検討されている方は財産をあげる相手も慎重に判断し、あげた後は一切管理しないというある種の覚悟も必要になります。

今回のまとめ

今回は現金の贈与を中心に解説してまいりましたが、不動産を贈与する場合は登録免許税という税金が発生しますので注意が必要です。もっとも、不動産を110万円以内で毎年贈与するということは、土地を少しずつ贈与するということになりますので、実務上不可能ではありませんが、コストを考えるとメリットは少ないと言えるでしょう。

暦年贈与最大のメリットは、長期間にわたって非課税で財産を次世代へ少しずつ渡すことが出来るという点にあります。「長期間」というワードからもわかる通り、高齢になってからの贈与は一般的に残された時間も少なくなり、贈与できる回数も限られてきてしまいます。さらに、非課税の範囲内でという制約を付加すると贈与できる金額も少なくなり、結果的に生前の財産移動はあまりメリットの無い物だった。ということにもなりかねません。

また、相続開始の3年以内に行われた贈与は相続財産に持ち戻すというルールも存在します。これは法定相続人と受遺者のみに適用されるものですが、一般的に贈与を行う場合は親から子へというケースが最も多いと思いますので、やはり高齢になってからの贈与は十分に注意して行う必要があります。

暦年贈与・相続時精算課税制度など相続税対策として取れる手段は他にも存在しますが、人によってどのようなプランがベストとなるかは千差万別です。暦年贈与を導入してみようと思われた方は当コラムを参考にしていただき、それでもご不安がある場合や、他の方法も知ってみたいといった場合は、お気軽に当事務所までご相談ください。

2021年も当事務所をよろしくお願いいたします。
本日も最後までお読みいただきありがとうございました。

※なお、当ブログは一般的なケースを元に解説しておりますので、個別のご相談・ご回答を希望される場合は下記よりお問い合わせください。

税理士法人内山会計 公認会計士・税理士 内山典弘

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