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発行 あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
編集 DREAMJOB Innovation Lab

マーケティング基礎知識関係性のマトリクス

コラム読者の皆様こんにちは!内山会計の内山でございます。

この記事では中小企業経営者・小規模事業者の方へ向けて、税理士・会計士としての立場から、専門的な知識・情報をわかりやすく解説してまいります。

師走の慌ただしい中、再びコロナの感染が拡大しています。ワクチン開発等明るいニュースの影響で株価は上昇しましたが、中小企業・個人事業の経営者にとって楽観視できるとは言えない状況がまだまだ続いております。

そこで今回のコラムでは「税務」の知識から離れ、先の見えないコロナ禍での営業活動へ少しでもヒントになればと思い、集客・マーケティングの基礎知識をお伝えしていこうと思います。
すでに潤沢な顧客基盤を持ち、集客に何ら苦労していないという方は無意識的にこれからお話することを実行しているのかもしれません。しかし、多くの中小企業・個人事業主が集客、そしてリピーターの獲得に苦労していることと思います。

特に形の見えづらい商材・サービス(セミナー講師や士業・生命保険など)を扱っている方にとって、今回のお話は知っておいて損のない知識だと思いますので、ぜひコラムで続きをご覧ください。

関係性のマトリクス

上図は関係性のマトリクスと呼ばれるマーケティングの世界では有名な図ですので、ご存知の方もいらっしゃるかもしれません。

図を解説すると、横軸があなたの商品・サービスへの必要性を感じているか否か。
縦軸はあなた及びあなたの会社・お店とお客様の関係性を表しています。

つまり、横軸で左に行けば行くほど、あなたの扱う商品・サービスの必要性を感じている方々となり、縦軸で下へ行けば行くほどあなたやあなたの会社・お店との関係性は深い状態の方々となります。

では、ここで問題です。
あなたが一番に自社商品・サービスを宣伝すべきターゲットは①②③④のどこに存在する方々でしょうか?

答えは④です。

理由は簡単で、あなたの商品・サービスに必要性を感じており、尚且つあなたやあなたの会社・お店との関係性も深いためです。イニシャルマーケットとも呼ばれるゾーンです。

④に存在する方々はビジネスを始めたばかりの方であれば、仲の良いお友達などが該当します。「今度、こんな商品・サービス扱うことになったから良かったら試してね」と声掛けするだけですね。
一方、すでにビジネスをある程度の年数されている方は既存客が該当します。
既存客からの紹介やリピートの獲得は大きなコストをかけることなく売上アップに繋がることは、読者の皆様も身をもってご存知だと思います。

しかし、④に存在する方々にも限りがあります。そこで、次にアプローチする先として③の「関係性は築いているが、商品・サービスの必要性を感じていない方々」をお客様にしていく必要があるのです。

③にどうアプローチするか?

少なくともあなたやあなたの会社・お店のことは知っています。そして、関係性は築けている方々ですので、悪い印象は持っていないことでしょう。
ただ、商品・サービスの必要性を感じていないためお客様にはなっていません。
例えば無料モニターだけ体験して契約に繋がらない方やイベントやセミナー等に来場されてその後契約になっていない方。資料請求をしていただいてそのままになっている方。経営者の方であれば交流会等で名刺交換した方も当てはまりますね。
このような方々をどのようにお客様に変えていくかということですが、情報発信を定期的に行うことが重要だと考えます。大切なことは「定期的」にです。
例えばメルマガやブログ・SNS。お店を営んでいる方であればLINE公式アカウントで定期的な情報配信やクーポン(無料クーポンではなく割引クーポン)の配信。YouTubeチャンネルの開設など手段は多く存在しています。
関係性は築けている方々ですので、「今度からこのような形(ブログ・メルマガ・LINE・YouTube等)で定期的に情報を送らせていただきます」と前もってお伝えしておけば良いだけです。あなたの提供する商品・サービスに必要性を感じていない方々ですが、いつ必要になるかは誰にもわかりません。時間のかかる場合もあるかもしれませんが、すぐに契約や購入・来店に結び付く場合もあるのです。
重要な点ですので再度申し上げますが、「定期的」に行うことが大切です。最低でも1カ月に一回程度は何らかの情報発信が必要であると身をもって感じています。
私も士業という立場上、形の見えづらいサービスを扱っておりますので、お客様になるかもしれない方々へ「忘れないでもらうため」と「(自分にとって)役に立ちそうな情報をくれる人」という立ち位置を情報発信することでキープしているのです。
定期的に情報発信することは労力のいることではありますが、何もしなければお客様はやって来ません。また、情報発信自体はわずかなコストをかけることでアウトソーシングすることも可能な時代です。
④へのアプローチ同様、わずかなコストで大きなメリットに繋がる可能性は高いマーケットですので、来場者リスト・モニターリスト・交換した多くの名刺など(これらは見込み客リストとも言えますね)が眠っている方は活用されることをおススメいたします。

③も潤沢ではない

先ほどお話した「見込み客リスト」の数が膨大であれば良いかもしれませんが、いずれ枯渇する日はやってきます。リピーターだけで商売が回って行ければそれに越したことはありませんが、そうは言っても新規のお客様を獲得することは継続的にビジネスを行って行く上で重要です。

そこで次に目を向けていただきたいマーケットが②に存在する方々です。
「あなたやあなたの会社・お店のことを知らず、あなたの会社・お店が取り扱う商品・サービスに必要性を感じていない方々」になります。

④や③に比べ②のマーケットが抱える人数は膨大です。扱っている商材によっては日本国民全員または世界中の人々が②のマーケットに入って来る方もいらっしゃることでしょう。

では、大きなマーケットである②に対してどのようにアプローチを行いお客様にしていくか? という問題ですが、多くの経営者が行うこととして②をいきなり④にしようとするケースがあります。つまり、いきなり契約に結びつけようとしてしまうのです。

これはほとんどの場合うまくいく可能性は少ないと言えるでしょう。
なぜそう言えるのか…例を挙げて解説していきます。

②は一度③にする

「例えば」の話です。
あなたが自宅でくつろいでいるとインターホンが鳴りました。応対してみると飛び込みのセールスマンで初対面です。興味のない商材を出され熱心に話をしてきます。
あなたはその商品を購入しますか?
「例えば」の話です。
あなたが会社で事務仕事をしているとケータイに着信がありました。出てみるとセールスの電話でした。聞いたことのない社名ですし、商品に興味もありません。アポを打診されましたが、スケジュールを調整して話を聞いてあげますか?

例を2つ挙げましたがどちらも②を④にしようとしていることがよくわかります。相手の商品・サービスにあなたが必要性を感じており、尚且つ相手のセールスマンの話術が巧みであればいきなり④へ移行し契約になる可能性もゼロではありませんが、現実としてその可能性は薄いと言えるでしょう。何より自分自身が②を④に変える営業活動を行うことは効率的でありませんね。

今回は飛び込みやテレアポを取り上げましたが、広告の出し方にも同じことが言えます。ネット広告・折り込みチラシ・フリーペーパーなど多様なメディアが存在しますが、商品・サービスの価格や効果などしか記載がなく、どんな人が行っているビジネスなのかわからない広告は多く存在します。

iPhoneなどのように誰でも知っている商材やトヨタ自動車さんのように誰でも知っている会社であれば、②を④にいきなり持ってくることは可能です。しかし、残念ながら世の中にあまり名の知られていない中小企業・個人事業主の方や、同じく名の知られていない商材・サービスを扱っている場合、②を③にしてから④に持っていく方が正攻法のマーケティング戦略と言えるのではないでしょうか。

つまり、あなたやあなたの会社・お店の存在をまずは知ってもらう必要性があるということです。特に形の見えづらい商材・サービスを扱っている方は「どんな人がやっているのか?」という点が非常に重要です。最終的に信頼を勝ち得なければ契約に繋がる可能性はありません。

どうやって②を③にするのか?

知名度は一気に上がりません。先に述べたように膨大な広告費をかければ一気に上げることも可能ですが、大企業に太刀打ちできる広告費は現実的ではありませんね。
だからこそ、②を③にすることが重要なのですが、具体的な方法としてモニターオファー・交流会への参加・ターゲットを絞った情報発信などが存在します。
モニターオファーは言い換えると無料お試しという言葉になります。扱っている商材・サービスにもよりますが、まずは無料で試していただき、どんな人がどんな思いでどんな商品・サービスを提供しているのかを知っていただくのです。「タダほど怪しいものは無い」などと警戒されることもあるかもしれませんが、当コラム読者は真摯にビジネスを行っている方ばかりだと思いますので、想いは必ず伝わります。
「自社の商品・サービスに自信はある。けれど、世の中に広く伝えきれていない…。広く多くの方々に伝え、良さを知っていただくためにまずは無料で試してください。必ず役に立てるはずです」
こんな内容の広告を見たことのある方もいらっしゃるのではないでしょうか? まさに②を③にする広告の代表例ですが、無料オファーは興味を持ってくれる可能性も高い物ですので、これまでと同じ広告費をかけたとしても、問い合わせ数は違ってくることでしょう。
次に上げた交流会への参加は、コロナ禍の現状難しいかもしれませんが、SNSを通じたオンライン上でのビジネスミーティングや各種交流会は盛んにおこなわれていますので、そういった場への参加が苦手でない場合は積極的に参加してみるのも一つの手だと言えますね。

②からターゲットを絞って③にする

最後に上げた「ターゲットを絞った情報発信」ですが、読者の皆様にとって理想のお客様像はありますか?
先ほどの無料オファーも誰彼構わず申し込まれても困るはずです。出来れば理想のお客様に多く利用していただきたい。そう思うのが当然だと思いますが、広告の出し方や広告文次第で理想のお客様がやって来るかどうかは大きく変わってきます。

ターゲットとは年代や性別・家族状況・居住地・年収などざっくりとしたカテゴリでくくった物とご理解ください。(例:30代・男性・妻と子ども一人・名古屋在住・年収500万円など)
自分の欲しいお客様はどのような方々なのか? あらかじめ設定し情報発信・広告を行えば、ターゲット以外に割く広告費は削減できますし、何より広告効果も期待できます。

マーケティングの用語でペルソナと言われるものもありますが、ペルソナはターゲットをさらに細かく設定した1人の理想像となります。
名前・年齢・性別・住所・家族・勤務先・年収・趣味・興味のあること・よく利用するメディア・現在抱えている悩み…などといったことをご自身で考えていただき設定します。設定した人物が求めるニーズを自社の商品・サービスで満たせるのかも考えます。

ネットの発達によりニーズが多様化している現代において、ターゲット・ペルソナの設定は重要です。どこにどんなニーズが埋もれているかわかりません。あなたの求める理想のお客様を明確に決め、どのようなメディアを利用してどのような情報を発信していくか決めておくことは大切です。

①にはどう対処すればよいか?

ここまでをもう一度おさらいしておきましょう。
まずは④へアプローチ。同時に③へもアプローチ。②はいきなり④にするために営業をかけるのではなく③にしてから④にする。
ご理解いただけたでしょうか?

では、まだ登場していない①のマーケットにはどのようにアプローチしたらよいでしょうか?
「あなたやあなたの会社・お店のことを知らず、あなたの扱う商品・サービスに興味のある方々」が①ですが、ここは大企業のマーケットです。
なぜそう言えるのか? 例をあげて解説します。

仮にスマホケースを販売しているお店を営んでいたとします。
「あなたやあなたのお店の存在を知らず、スマホケースを新しくしたいと思った方が一番に行うことはどんなことでしょうか?」
現代では「ググる」という行動を取る方が多いのではないでしょうか?

参考までに私もコラム執筆時の2020年12月17日22:42に「スマホケース」で「ググった」ところ、一番初めに表示されたのは楽天市場さんでした。SEO対策や広告費でこのような大企業相手に戦えますか? 仮に楽天市場さんへ出店したとしても、同じく出店しているライバル相手に勝ち抜いていくことの難しさは容易に想像できます。

もっともスマホケースとは違い、自社でしか扱っていない商品・サービスであれば①のマーケットにアプローチすることは可能かもしれませんが、ライバルの多い業種の方であれば①にアプローチすることは避けた方が無難と言えるでしょう。

今回のまとめ

いつもの税金のお話とは少し趣向を変え、マーケティング・集客の基礎知識について解説させていただきました。当事務所では日々の経理指導や決算対策等も重要な仕事ではありますが、お客様の売上に貢献することも大切な仕事の一つだとスタッフ一同認識しております。

私はマーケティングの専門家ではありませんが、コラム読者の皆様と同じ経営者でもありますので、集客がいかに大変なことであるかは身をもって知っています。

今回解説させていただいた知識は私自身人から教えていただいたことですが、その方の話を聞きながら、これまでの事務所経営の中で無意識的に行っていたことでもありました。また、情報発信は今こうしてブログやコラム等で行っておりますが、来年には違うメディアも利用して、今以上に積極的な情報発信を行っていく予定です。

当事務所の専門分野ではありませんが、集客・マーケティングに関する一般的なご相談であればお受けすることも可能ですので、どうぞお気軽にご連絡ください。
コロナ禍の難局を乗り切るヒントになれば幸いです。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

税理士法人内山会計 公認会計士・税理士 内山典弘

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