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発行 あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
編集 DREAMJOB Innovation Lab

「 建設・土木業と電子帳簿保存法 」

コラム読者の皆様こんにちは!
内山会計の内山でございます。

この記事では建設・土木業の方へ向けて、税理士・会計士としての立場から、専門的な知識・情報をわかりやすく解説してまいります。

前回はスタートしたばかりのインボイス制度について緩和措置・期間を解説いたしましたが、今回はいよいよ今年で猶予期間が終了する改正電子帳簿保存法について解説していきます。

本件は以前当コラムでも解説させていただきましたが、紙のやり取りが多いであろう建設・土木業の方は年末に慌てるよりも今の内から備えておくことが必要だと思います。前回のコラム執筆時点からさらに改正された部分もありますので、ぜひ最後までお付き合いください。

改正電子帳簿保存法

※国税庁HPより抜粋して引用(https://www.nta.go.jp/law/joho-zeikaishaku/sonota/jirei/tokusetsu/pdf/0023006-085_01.pdf)

改正電子帳簿保存法(以下、電帳法)とは、「データはデータで、紙は紙かデータで保存すること」という事になります。
例えば、取引先からメールで来た見積書や領収書を紙で保存することは禁止です。反対に紙で届いたものをスキャンしてデータとして保存しておくことは、基準を満たした場合O.K.となります。

つまり、これまで以上にデータ保存の必要が発生するようになるため、事業者はクラウドを始めとした各種システムを導入する必要があると言えます。

しかし、請負契約書を筆頭に建設・土木業界は紙で扱う書類が非常に多い業界と言えます。ちなみに、各種契約書も電子契約とした場合は収入印紙が不要となるメリットもありますので、今回の改正を機にすべてを電子化するという決断も決して間違いではありません。

「まあ、そうは言っても…」という声が聞こえてきそうですが、私なりに中小規模の建設・土木業者が電帳法の改正に対応するための手段をケース別に考えてみましたので参考にしていただければと思います。

デジタル対応レベル別改正電帳法対応方法

何でもかんでもデータ化しなさいと言われても、企業規模やスタッフの意識・能力によって出来ることには限界があります。そこで、自社がどのくらいのデジタルレベルなのか? を見極めたうえで、対応レベルの検討をしてみてはいかがでしょうか。

ここではデジタル初級・中級・上級と三段階に分けて解説していきます。

デジタル初級の事業者

デジタル初級の事業者の場合、データ・紙それぞれどのくらいの割合でやり取りしているかをまずは分析してみましょう。取引先と紙でしかやり取りが無いということであれば、日常の取引に関しては一先ず紙のまま続けましょう。しかし、ネットを介して材料や工具の注文をするケースもあるでしょうから、その場合に備えて領収書や納品書のPDFを変更履歴が分かる保存方法で格納できるクラウドの導入をお勧めいたします。

これはいわゆる“改ざん防止”のための措置という今回の改正に当てはまる部分となります。具体的な製品を取り上げることは避けますが、「電子帳簿保存法 クラウド」と検索していただければ、様々な製品が存在することが分かります。
どれを選ぶか? となると、先々を考えクラウド会計ソフトと連動したシステムを選ぶと良いでしょう。費用も月額数千円とリーズナブルに始められますので、デジタル初級の事業者はまずクラウドの導入を始めることをお勧めします。

デジタル中級の事業者

デジタル中級の事業者であれば、クラウド会計ソフトは導入済みかもしれません。初級からのレベルアップとして、紙で届いた領収書もデータ保存へ移行させてみてはいかがでしょうか?

スキャナ保存をする際は、書類の作成・受領から遅滞なくデータ化してタイムスタンプを押す必要がありました。このためスタッフの業務量増加・新システム導入費用などが発生しました。
しかし、2022年の改正法で保存までの期間が最長2カ月+7営業日(約70日)以内に伸びました。また、タイムスタンプの要件も既述の変更履歴の分かるクラウドシステムであれば不要となったため、スタッフの業務効率も上がることでしょう。

また、紙で届いた領収書のデータ化と合わせて、自社から送る各種書類も出来るだけデータ化して行くことも進めて行きましょう。もちろん、関係者の理解が必要なことではありますが、近い将来ペーパーレスは今以上に進みますので、今のうちから備えておく必要があると言えるでしょう。

デジタル上級の事業者

デジタル上級の事業者であれば、これまでの事と合わせて電子契約を導入してみてはいかがでしょうか? 印紙代の節約にもなりますし、契約書の紛失ということも無くなります。

現状ではすべての契約が電子化できるわけではありませんが、建設・土木業の方が日常使用する契約書であれば、ほとんどが電子化可能です。電子契約も「立会人型」「当事者型」と大きく分けて2種類の契約方式がありますので、締結する契約によって使い分けると良いでしょう。なお、電子契約については以前本コラムでも取り上げたことがありますので、詳しくはそちらもご覧ください。

今回のまとめ

テクノロジーの進歩は目を見張るものがあります。私が会計士になったころはすべて紙の帳簿でしたし、分厚いファイルに囲まれて仕事をしていました。それが現代ではこのコラムを執筆しているPC一つでおおよその会計業務はすべて完結できてしまいます。

電子化やペーパーレスといった流れが止まることは無いでしょうから、今回の法改正を機に自社のデジタル浸透レベルを見極め、出来るところからデジタル化して行ってはいかがでしょうか?

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

税理士法人内山会計 公認会計士・税理士 内山典弘

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