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発行 あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
編集 DREAMJOB Innovation Lab

「福利厚生とスポーツジムの会費」

コラム読者の皆様こんにちは!
内山会計の内山でございます。

この記事では建設・土木業の方へ向けて、税理士・会計士としての立場から、専門的な知識・情報をわかりやすく解説してまいります。

新年度が始まりましたが、読者の皆さんは労働環境について考えたことはあるでしょうか? 建設業は一般的に労働災害が多いと言われますが、体のケガ同様にメンタルの部分についても配慮する必要があると言えるでしょう。

近年のうつ病による休職の増加などは、まさにメンタル面の不調が原因です。経営者としては建設労災だけでは従業員を守れなくなった時代が来たとも言えますね。
そこで今回のコラムでは福利厚生の一環として、スポーツジムを始めとしたレジャー施設利用を会計的な側面から解説して行きたいと思います。

「仕事が忙しくてそれどころではない…」と思う経営者もいらっしゃるかもしれませんが、従業員の福利厚生を良くしていくことも業績アップ手段の一つであると考えます。どうぞ最後までお付き合いください。

福利厚生とは?

福利厚生とは会社が従業員に対して提供する給与や賞与以外の報酬やサービスの事を指します。法人であれば加入必須となる社会保険も福利厚生の一つですが、法律で決められたもの以外にも会社側の任意で社員食堂などを設置しているところもありますね。

・従業員の経済支援
・従業員のモチベーションアップ

福利厚生を大きく分けると上記2種類のいずれかに該当することになりますが、今回取り上げるレジャー施設の利用はモチベーションアップに繋がる福利厚生と言えるでしょう。

近年、健康志向の高まりを受けて、スポーツジムの法人会員など福利厚生として「体を動かす」施設の利用を従業員へ促進する企業が増えてきました。建設・土木業の方であれば日頃から体を動かす仕事をされているかもしれませんが、本社勤務でデスクワークの方などは運動習慣のない方も多いことでしょう。

従業員の心身の健康を保つためにもスポーツジムを始めとした「体を動かすレジャー施設」を福利厚生に組み込んでみてはいかがでしょうか。

福利厚生はどのように導入する?

では、スポーツジムに代表されるレジャー施設利用を福利厚生として導入する場合、どのような手段をとればよいでしょうか。

会社規模がある程度大きい場合などは福利厚生団体を設立し、会社からお金を出してもらうという手段がございます。ここで支出した会社のお金は全額が福利厚生費として損金算入することが可能です。

しかし、この団体が会社と別個の存在であるか否かによって、会計上の処理は変わってきます。

①会社と別個の存在である場合
既述の通り、団体へ対してお金を出した時点で福利厚生費として処理を行います。

②会社と別個の存在であると見られない場合
会社が団体に支出するお金は、会社の外部への支出とはなりません。団体が外部に支出した時に会社としても外部への支出があったことになります。つまり、決算時期に慌てて団体へ拠出したとしても、団体がスポーツジム等と契約し支払いを行わない限り、経費としては認められません。

会社と別個か否かについては次の様な判断基準が存在しますので、参考にしてください。

団体の事業経費相当部分を会社が負担しており、かつ次に掲げる事実のいずれかに該当する時。

1. 法人の役員または使用人で一定の資格を有する者が、その資格において当然に当該団体の役員に選出されることになっていること。

2. 当該団体の事業計画又は事業の運営に閲する重要案件の決定について、当該法人の許諾を要する等当該法人がその業務の運営に参画していること。

3. 当該団体の事業に必要な施設の全部又は大部分を当該法人が提供していること。

以上の判断基準に該当した場合は会社と別個のものであるとは見られない可能性が高いです。恐らく、多くの中小企業では福利厚生団体を作った場合でも会社と同一な団体となるケースがほとんどだと思いますので、既述の通り会計上の処理には十分な注意が必要です。

中小企業の場合の実務

従業員の少ない中小企業の場合は、福利厚生団体を作るほどではないというケースもあることでしょう。例えばスポーツジムと法人会員契約を結び、従業員の利用を認めたとします。

これは福利厚生に該当しますので、入会金や年会費は福利厚生費として処理することが可能となりますが、注意していただきたい点として全従業員が利用できることが条件となります。
役員のみが利用できる状態や、特定の役職者以上が利用できるという状態では福利厚生とは言えません。税務調査が入った際には福利厚生費として計上した経費は否認される可能性が高いです。
なお、 特定の役員又は従業員のみが利用するために入会している場合は、入会金は会社の資産には計上されないで、当該個人への給与とされ、 臨時的なものなので賞与扱いとされます。月会費や年会費の場合も同様に取り扱われます。

では一人親方や一人法人の場合はどうなるでしょうか?
結論からお伝えすると、スポーツジムの利用が事業と関係のある場合は経費として処理することが可能です。例えば、スポーツジムの内装工事や修繕保守を請け負っており、付き合いと運動を兼ねて加入したという場合であれば、否認される可能性は低いと言えるでしょう。
反対に「運動不足解消のため」という理由だけでスポーツジムへ加入した場合は経費と認められない可能性が高いです。

いずれのケースでも「どの程度事業と関係があるのか?」という点がポイントとなりますので、詳しくお知りになりたい場合は当事務所までご相談ください。

今回のまとめ

コロナ禍での外出自粛による運動不足は多くの方が抱える問題だと考えます。一方、労働環境におけるメンタルヘルスの重要性はますます高まって行くことでしょう。

体を動かさない=気持ちが落ち込む。という単純な話ではありませんが、従業員の定着率向上とモチベーションアップのためにも新年度から福利厚生を充実させてみるというのはいかがでしょうか?

今回取り上げたスポーツジム以外にも福利厚生として導入できる施設やサービスは多岐に渡ります。どんな福利厚生にしようかということは従業員の意見も大切ですので、新年度の会議で議題に上げて見るというのも良いかもしれませんね。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

税理士法人内山会計 公認会計士・税理士 内山典弘

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