発行 あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
編集 DREAMJOB Innovation Lab
労働局は、「大阪労働局」「東京労働局」のように都道府県名を付されて、都道府県毎に設置されている労基署やハローワークの上部機関です。上部機関なら労基署よりも、煩わしいところのように感じるかも知れませんが、会社と労働者との間に労働関係の紛争が発生した場合に、紛争解決に必要な助言や指導、あっせんを行うことが主な役割です。
パワハラについての理解不足で相談が持ち込まれることがあるように、当事者の法令や判例の理解不足や誤解によって労働問題が発生することがしばしばあります。そこで、紛争に発展することを未然に防ぎ、紛争に発展した場合の早期解決を目的として、労働局は、当事者の相談に応じて、情報の提供を行っています。第三者である労働局が提供する情報と丁寧な説明により、相談者が自らの思い違いを理解することもあるのです。
相談と情報提供によっても解決しない場合は、会社に対して助言・指導が行われることがあります。この助言・指導は、個別労働紛争の問題点を指摘し、解決の方向を示唆することにより、紛争当事者による自主的な解決を促進する制度ですが、会社や従業員に対し、一定の措置の実施を強制するものではありません。
パワハラについて従業員から労働局に相談が持ち込まれると、次のような助言・指導が行われます。
(出典:厚生労働省)
このような助言・指導は、労働局が会社に対して理解を求めるもの・理解不足を補うことを目的としており、それほど重いものではありませんが、従わない場合には1段と強い「勧告」が行われることがあります。「勧告」にも強制力はありませんが、従わない場合は厚生労働省によって会社名が公表される可能性があるので注意してください(労働施策総合推進法第33条第2項)。
本人が金銭による賠償を希望している場合には、労働局が紛争調整委員会によるあっせん手続を案内することがあります。紛争調整委員会は、弁護士や社会保険労務士等によって構成され、労働局に置かれる機関です。当事者の間に、弁護士や社会保険労務士等の学識経験がある第三者が入り、双方の主張の要点を確かめ、紛争当事者間の調整を行い、話合いを促進することにより、紛争の円満な解決を図る制度があっせん手続です。労働審判や民事訴訟と比較すると、無料で迅速かつ簡便に行われますが、当事者があっせん手続に参加する意思がない旨を表明したときは実施されない、つまり参加が任意であることが大きな特徴です。なお、このあっせん手続には、特定社会保険労務士を代理人にして参加することもできます。
パワハラによるあっせんの実例は次のようなものです。
(出典:厚生労働省)
会社側は、あっせん手続に参加しないという選択も可能ですが、この事例のようにパワハラの場合のあっせん手続は、従業員が慰謝料等の金銭解決を求めて申し立てるのが一般的です。従って、会社側が参加しなかった場合には、当該従業員が合同労働組合(ユニオン)や法律事務所に相談を持ち込み、より深刻な労使紛争(ユニオンなら団体交渉・法律事務所なら労働審判や民事訴訟等)に発展する可能が高くなります。従業員からパワハラについてあっせん手続の申し出があった場合には、安易に判断さず、社会保険労務士等の最寄りの専門家に相談することをお勧めします
今回は、労働基準監督署にパワハラの相談が持ち込まれるとどうなるかについて、解説しました。
従業員が労働問題について相談する際、最初に労基署に駆け込むことが多いと考えられますが、パワハラ問題は所管ではないため、持ち込まれたところで労基署から調査・指導を受けることは原則としてありません。しかし、これが契機となり、労働局から助言・指導を受けたり、あっせん手続が行われることもあります。また、従業員の相談から法令違反と誤解されるような内容が伝わり、労基署による臨検・調査になることも考えられます。
こういう事態を避けるためにも、パワハラの相談窓口を社会保険労務士等の社外の専門家に委託することをお勧めします。
当該コラムは、あいおいニッセイ同和損害保険株式会社の協力のもとに、DREAMJOB Innovation Lab(運営:株式会社DREAMJOB)が運営管理しております。