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発行 あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
編集 DREAMJOB Innovation Lab

「NO.2の育て方④NO.2が期待通りに活躍しない理由」

前回はNO.2の正しい選び方というテーマでお伝えしました。人材選びから間違っていた場合には人選を再検討するか、NO.2と方向合わせをやり直す必要があります。

NO.2が期待通りに活躍しない理由

能力的にも、性質的にも申し分ない人材をNO.2に据えているはずなのに、本音を言うと、まだまだ期待を超える活躍とは言い難い。そう苦悩する社長に対するメッセージです。

理由としてはつぎのようなことが考えられます。

・NO.2の適性のない人材をNO.2にしている
・社長とNO.2の役割分担ができていない
・結局、社長が何でも自分でやらないと気が済まない
・NO.2が仕事をしやすい環境を整えていない

NO.2の適性のない人材をNO.2にしている

NO.2の適性については同じ話の繰り返しになってしまうので割愛してしまいますが、冷静に考えてみて人選が正しかったのか今一度考えてみましょう。

苦労を共にしてきて、自分との相性も良く、話しやすい。情もあるし、自分をいつも支えてくれている、いつまでも一緒に仕事をして欲しい。

そのNO.2は人間的な側面からすると合格なのかもしれません。

ただ、組織的な機能として求められるNO.2の職責を全うしてくれないのであれば、やはり適性がない人材を選んでしまっているのかもしれません。

仕事自体はよくできて、自分との相性も良い。ただ、NO.2タイプではないかもと感じるのであれば、NO.2以外の役割を検討した方がお互いに良い結果を生むと思います。その際には、待遇面での配慮やプライドを傷つけたり、要らぬ誤解を生じさせないように留意する必要があります。

社長とNO.2の役割分担ができていない

本当の意味で適性がないかどうかと考える前に、そもそも役割分担ができていなかったという状況があると思います。そして、その前提としてのNO.2の役割と能力についての理解が足りない場合もあります。

どんなに優れた人材がいたとしても、役割が明確でなければ活躍しようにもできません。

こうした状況が発生する理由は、社長がNO.2に対して細かく言わなくてもわかってくれるだろうという何の根拠もない期待があるからです。

例えば、新入社員を採用した時には仕事内容や役割を具体的に伝えるはずですが、NO.2に対してはそうした当たり前のことを省いてしまうのです。

NO.2が積極的に社長に対して、「その仕事は自分が引き受けます」と申し出てくれれば良いのかもしれませんが、NO.2としても出過ぎたことを言って社長の不興を買うことを恐れて言い出せない場合もあるでしょう。

これまで社長が担当してきた仕事は理由があって社長がしてきたはずですが、社長としてもNO.2に任せたい仕事と自分がやるべき仕事の区分がおぼろげながらも内心にはあるはずです。

ですので、手順としては先ずは社長自身がしている仕事の棚卸をする必要があります。そして、その内容をNO.2と共有したうえで分担をするという極めて当然のことを行うだけのことです。役割を明確にしない限りはNO.2も頑張りようがありません。

経営に関することが多分に含まれている場合にはケースバイケースという事柄もあるでしょう。その際は情報共有を密にし、協議で決めるなどの一定のルールを決めておけばよいでしょう。

結局、社長が何でも自分でやらないと気が済まない

頭ではNO.2をはじめとする部下に仕事を任せないといけないと考えながらも、さまざまな理由をつけて仕事を手放すことができない社長がいますが、本質的には、部下を信用しておらず、かつ自分がやったほうが早くて間違いないという思い込みがあるのだと思います。

その状態が続けばいつまで経っても社長の負担は減らないのですが、言ってみれば自らその状況を招いているにも関わらず、部下への不満を漏らす社長では本末転倒です。

NO.2にしっかり機能して欲しい、活躍して欲しいと考えるのであれば、社長の悪習慣を先ずは変える必要があります。そして、任せた以上は何があっても、最終的には自分が責任をとるという覚悟を決めないといけません。

NO.2が仕事をしやすい環境を整えていない

能力、人柄も申し分ないNO.2がいても、NO.2が仕事をしやすい環境を整えてあげなければ、NO.2がひとりで苦労するばかりで、成果が出せない場合があります。

会社がこれからも成長していくためには、さまざまなことを見直していかなければなりません。

場合によっては、過去のやり方を捨て、新しいやり方を積極的に取り入れていかなければいけない場面もあるでしょう。

そこで何が起きるかというと、社内の抵抗勢力による抵抗です。

業務のやり方、ルールの見直し、教育や研修、新しい評価制度、新規事業など、経営では変えていかなければならないことも多岐に渡ります。

新しいことを始めたり、これまでを見直すということは、今ある仕事にさらに負荷がかかる期間がどうしても発生します。そして、現場では長らく慣れ親しんだやり方への否定に感じたり、役割によって既得権のようなものを得ている社員もいるかもしれません。

一般社員というものは、会社の状況がどうであれ、在籍年数が長くなればなるほど自分にとって快適な環境を手放したくないものです。それを破壊する相手を敵視します。表面的には会社の方針に従っているように見せかけても不平や不満は残りやすいものです。

NO.2が仕事をしやすい環境とは何でしょうか。事例を用いて解説します。

社長との個別面談で「あなたにこういうことを任せたい」と話があり、NO.2としてのポジションを提示してきました。人材もそれを了承しました。では早速取り掛かって欲しいということになり、NO.2が寝る間も惜しんであれこれ検討し、実行計画も立て、社長と共有しました。その計画を社員に対してNO.2が話をしたところ、社員からは不平不満が噴出し、計画は頓挫しました。
なにか手順が間違っていることにお気づきでしょうか。

この会社にはそもそも組織図などなく、社長が権力を全て握っていたので、命令指揮系統という概念がなく、社長は何ごとも秘密主義です。計画というものを練ったことがなく、社員に対する事前の根回しといった発想もありません。一般社員からするとまさしく青天の霹靂となり、NO.2にとっては要らぬ反感を買うことになったのです。一度ついた印象は簡単に拭えません。その後、NO.2の活躍は当分の間ありませんでした。

では、本来すべきだった手順はなんだったのでしょうか。

・社長がNO.2として指名し、NO.2に委ねることを明言すること
・社長の命により、NO.2が実行する組織体制を敷くことに関して社員のコンセンサスを得ること
・NO.2として与えた権限の内容を示すこと

なにも難しいことはありません。必要だったのは、社長から社員に対しての目的、理由、内容の公表です。たったこれだけのことを行わないだけで、NO.2は苦境に立たされ、社員からの理解や信頼を得るために時間を浪費します。その間、NO.2が持ちこたえられればまだ良いのですが、多くの場合は当初の意欲は消え失せ、一般社員と馴れ合い、期待される職責を放棄するか、最悪は早期に退職していきます。

「社長からの指示で、今後はこの人が指揮を執る。何のために、何をどうやっていくかの計画の説明があり、理解はした。」ここまでは最低限やらないといけないことです。

会社を良くするためという大義名分があっても、変化に現場はなかなかついてきてくれないのがどこの会社でも起きることです。にも関わらず、最初からあえて躓くようなことを犯してしまう訳です。

この事例は、中途入社してきた人材をNO.2とする際に発生しやすいパターンです。

NO.2の活躍を期待するのであれば、活躍しやすいようなお膳立てを社長がしなければなりません。

いかがでしたでしょうか。

NO.2が期待通りに活躍しないのはNO.2の問題というよりも、社長の行動如何という話でした。

ただ、難しい話ではありません。どうしたら仕事がしやすくなるかを想像力を働かせて、順を追って環境を整えるだけです。

なかにはそういう逆風の中でも成果を上げることがNO.2の腕の見せ所でもあると考える社長もいるかもしれません。

けれども絶対的な権限を持っている社長とNO.2に対する社員の反応は全く異なります。NO.2は社長と会社のために汗をかく覚悟をしているのに社長からのサポートがないのではNO.2も浮かばれませんし、社長との信頼関係も長くは続かなくなってしまいます。

次回は、本テーマの本丸であるNO.2の育て方についてお伝えしようと思います。最後までお読みいただきありがとうございます。

株式会社コナトゥスマネジメント
代表 平原 孝之