DREAMJOB Innovation Lab

若手士業イノベーション協会×DREAMJOB Innovation lab
NO.2の育て方⑧外部からのNO.2採用で気をつけること



NO.2候補が自社にいない、社長が自ら育成できないといった場合には、外部からNO.2人材を採用する選択肢もあります。

そのこと自体はもちろん間違ってはいないのですが、その際に知っておくべきこと、気をつけておくべきことについて今回はお伝えしています。

■優れた経歴、自信にあふれた頼もしい印象のNO.2候補なのに

人材紹介会社等を通じて、大手企業出身の優秀そうな人材に出会うことができました。学歴、職歴、実績も申し分なく、面接してみると人あたりもよく、頼もしい印象で即採用を決め、とんとん拍子で入社までたどり着きました。

社長としてはこれで自分の仕事が楽になる、組織作りにスピード感が生まれ、業績も今以上に良くなる、そう思ったに違いありません。

入社後はNO.2との会議の時間を増やし、現状の課題や今後の展望などについて語り合い、社長も気分が高揚しています。

しばらくするとNO.2から自社の課題整理やその対応、解決に向けての資料が社長に提出され、その洞察力や解決案を見て、既存の従業員にはとてもこのレベルの人間はいないと社長もますますこのNO.2に惚れ込んでいきます。

NO.2に好きなようにやってみて欲しいと伝え、NO.2に任せることにしましたが、その後、特に成果も上がらず、以前に比べてかえって社内が混乱しているだけと他の社員からの報告があり、NO.2自身も疲れ切っている様子が伺えました。

なぜこんなことになってしまったのでしょうか。

こうなってしまうのにはさまざまな要因が含まれているので、ひとつずつ解説していきます。

・大手企業出身の優秀人材は中小企業の環境で必ずしも活躍するとは限らない
・郷に入っては郷に従えができない
・社長の根回し不足
・権限移譲がない
・NO.2の本当の気質や社長との相性を見抜けなかった
・NO.2が抱く待遇への不満

■大手企業出身の優秀人材は中小企業の環境で必ずしも活躍するとは限らない

大手企業では、プロジェクトに対しては計画があり、一定の予算があり、計画を遂行するためにチームを編成することもできる可能性があります。

一方、中小企業では、予算も人材などのリソースがほとんどなく、制約条件ばかりの中で成果を出していかなければなりません。周囲の従業員の理解やサポートもないまま、ないない尽くしの環境で、ある意味全くのゼロから取り組みをしていく必要がある訳です。

NO.2本人もその状況はある程度は予想していたかもしれませんが、想像以上の制約条件に戸惑いを隠せない場合もあるでしょう。

例えば、新規事業を始めるために広告費や販促費が必要でも、社長からはビタ一文の予算も出してもらえず、部下が欲しくてもデキの悪い暇そうな社員しかあてがってもらえない、極端に言えばそんな環境からのスタートです。

大手企業で優れた実績があったとしても、それは周囲のサポートや環境があってのことだとすると、環境が異なる中小企業でそのNO.2が成果を出すには数年単位の時間がかかるかもしれないし、全く活躍しないまま早期に去ってしまうかもしれません。

都市伝説かもしれませんが、メガバンクで部長をしていた人材を迎え入れたところ、全く使い物にならず早々に退職したといった話がたくさんあるのはこういう背景がある訳です。

先ずこうしたことが起こりえることを知っておいて頂きたいと思います。

■郷に入っては郷に従えができない

NO.2が鳴り物入りで入社したとしても、新入社員であることには変わりありません。会社にはそれぞれ社風や独自のやり方がもちろんありますので、先ずはそれを理解するところから始まります。

自分に多少の自信があり、功を焦るNO.2は、自分が勤めていた会社ではどうであったか、こうあるべき論を振りかざしがちな傾向にあるかもしれません。

既存の従業員からするとある日突然やってきた新入社員が自分たちが勤める会社の批判を始めているように受け取られてしまうこともあります。

一部では「そうなんですよ、この会社って・・・」と同調する従業員もいるかもしれませんが、その環境でやってきた側からすれば自分たちも否定されているように感じる場合もあるでしょう。

言葉が過ぎると、結局はその状況を作ってきた社長を批判することにもなりますので、NO.2自身もこの点を認識しないといけないです。

課題が多いからこそ、そのために自分が採用されたという自覚を持ち、あるがままを一度は受け入れて、社内での人間関係を作りつつ、多少時間はかかっても、課題とその原因を丁寧に洗い出し、建設的な意見を出していくのがベターな方法です。

成長のためには過去の否定が必要な面もありますが、入社した途端、会社のこれまでを全否定するのは評論家ですし、周囲の協力も得られません。

こうした思考の持ち主をお迎えしても多々ある課題を解決するどころか、社内を混乱に陥れてしまいますので、面接時にもしっかり確認しておきたいポイントと言えます。

■社長の根回し不足

以前の投稿でも書いたことですが、NO.2人材を迎える前にはあらかじめ社内に対して、採用の意図や取り組みの表明、協力の要請をしておくことが重要です。

このプロセスを疎かにして、入社と同時にNO.2がさまざまな取り組みを始めると既存の従業員は不信感を持って身構えます。

何か新しく物事に取り組む時には必ず抵抗勢力が現れるものですが、まして入社してきたばかりのNO.2に対しては風当りが強い場合もあります。

目に見えて抵抗しないにせよ、多くはお手並み拝見と傍観し、非協力的な従業員の中でNO.2が孤軍奮闘するのを社長が放置しないようにしないといけません。

■権限移譲がない

これも以前の投稿で書いた内容ですが、日々の仕事においてNO.2に全く裁量権がなく、何かあるたびに社長に確認するようでは部下の目にはNO.2は単なる伝書鳩に映り、威厳も保てないうえ、現場も停滞することになります。その状態だとNO.2としても仕事がやりづらいのは明らかです。

少なくとも任せたことには社長は後から口を挟まない、結果に対する責任を取る覚悟をしないといけません。

■NO.2の本当の能力や気質、社長との相性を見抜けなかった

期待以上の働きをしてくれるNO.2であれば良いのですが、環境によっては経験や能力があってもそれらが発揮できない場合があるとお伝えしました。

仮に環境の問題であれば、NO.2が活躍しやすい環境に改善すればよいのかもしれませんが、そもそも面接で言っていたほど能力がなかったり、仕事の進め方が独りよがりであったり、時間が経つにつれ、社長である自分と価値観が合わないと感じ始めてしまうと社長にとってはその人材はハズレだったと判断せざるを得ません。

面接で全てを見抜くことはもちろんできませんし、人間ですから気持ちや考え方が変わってしまうこともあります。

一般従業員と比べてもそれなりの待遇で迎えたはずが、どうもしっくりこないと思ったら、早々に見直しをした方がお互いにとって不幸にならないと思います。

■NO.2が抱く待遇への不満

採用にあたって、年収等の待遇について話し合ったと思います。社長によっては当初は試用期間という意味合いで満額回答は避け、成果に応じて段階的にということで、求職側のNO.2もそれで納得して入社していると思います。

ただ、成果というものは全てが数値化できるとは限らず、またNO.2を欲するくらいですから評価制度をはじめとする内部体制も出来上がっていない可能性もあります。

何をどこまでどれだけやったら当初約束の年収になるのか、評価基準も曖昧なまま走り出してしまうと、仮にNO.2が成果を出し続けたとしてもいつまで経っても年収が増えない、そういう状態になることもあり得るはずです。

現状の働きとサラリーに大きな乖離があり、ただただ苦労の連続で努力も成果も報われないと感じれば、このまま会社に居ることが自分の仕事人生にとって正しい選択なのかとNO.2も人知れず悩むでしょう。

社長との信頼関係が強く、会社の状況を鑑みて、今は自分のことを持ち出すのはやめておこう、もっと成果を出そうと考えられるNO.2であれば良いのですが、そう思えなければ毎日が苦痛で不満となり、去っていくと思います。

お金の話は年中したくないのが社長の気持ちでしょうし、今出してるサラリーで納得して欲しいのが本音かもしれません。

ただ、待遇に対して不満を持つというのは最終的な理由であって、社長との間に強い信頼関係や仕事に対するやりがいを感じられないというのが真因だと思います。

本人がどうしてそういう気持ちになってしまったのかを社長も自分を顧みる必要があります。

NO.2に対する労いが足りなかったか、コミュニケーションが不足していなかったか、仕事をしやすいように配慮できていたか、権限移譲ができていたか、NO.2から尊重されるような言動が取れていたか、考えることは多いはずです。

外部からNO.2人材を採用する場合に限りませんが、NO.2を活かせるかどうかは社長の能力、人格に懸かっている部分も多いです。

NO.2に求めるばかりではなく、社長としても不断の努力を怠らないことが大事です。

今後、NO.2人材を採用しようと検討されている社長にとって本稿がお役に立つことがあれば幸いです。最後までお読みいただきありがとうございます。



株式会社コナトゥスマネジメント 代表  平原 孝之