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発行 あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
編集 DREAMJOB Innovation Lab

「 NO.2の育て方⑥
社長がやってしまうNO.2への10個のNG対応 」

これまでは理想のNO.2を中心にお伝えしてきました。今回は社長に考えて欲しいことをお伝えしていきたいと思います。得難いはずの存在であるNO.2に対して社長がやってしまうNG対応です。

優秀で、社長の意見を尊重し、戦略を実行してくれる頼れる存在であっても、NO.2も感情を持ったひとりの人間です。NO.2に対する取り扱いを間違ってしまうと、社長から離れていってしまいます。

社長がやってしまうNO.2へのNG対応

具体的にみていきましょう。

①自分の分身を作ろうとする
②権限移譲しない
③抵抗勢力から守らない
④労いや感謝の言葉をかけない
⑤コミュニケーションを取らない
⑥情報共有しない
⑦意見を聞かない
⑧無理難題を丸投げする
⑨社長がやるべきことをしない
⑩働きに見合う報酬を与えない

ざっと見ただけでわかるように、求めるばかりでNO.2が気持ちよく働く環境を作る意思を感じませんし、本人とも信頼関係が築けなさそうです。

①自分の分身を作ろうとする

社長は自分のやり方に自信を持っていることが多いです。創業から今まで事業継続してきたのですから当然です。そこでNO.2にも自分のやり方を踏襲して欲しいと考えるのも理解できます。

けれども、NO.2と社長は違う人間です。得手不得手も異なりますし、役割も異なるはずです。NO.2は戦略の実行部隊であり、社長が苦手な部分を補う補佐役です。

にもかかわらず、社長は自分のコピーを作ろうとしてしまいます。自分の手足として、自分の流儀で、自分の言ったとおりにやればいい。そう考えてしまいがちです。

NO.2自身の持ち味を活かさずに、ただ指示通りにやれということではNO.2も戸惑い、思うような活躍はできません。

②権限移譲しない

社長が考えた戦略を実現するためにNO.2は戦術を練り、現場で指揮を執ります。けれども権限の全てを社長が握っている状況で、NO.2が現場での指揮は執れるでしょうか。

最低限、判断する範囲の線引きを決めて、NO.2に決裁権をある程度持たせないと、現場で何かあるたびに社長に確認してくるというのではNO.2は単なる伝書鳩に成り下がります。部下も伝書鳩に対しては敬意も威厳も感じません。

また、現場で決めたはずのことを社長が後からひっくり返してしまうこともよくあります。NO.2の面子は丸つぶれですし、現場もやり直しという負担を強いられます。

NO.2に一旦任せたことに、社長は口を出さない。これが鉄則です。

③抵抗勢力から守らない

会社で何か新しいことに取り組む場合に社内の抵抗に遭うことが往々にしてあります。社長はNO.2がしやすいように環境を整える必要があると以前にもお伝えしましたが、NO.2が現場の指揮を執るのは自分の指示であることを社員に伝えることなく取り掛からせると上手くいきません。

また、社長が決めたはずのことなのに、社内からの抵抗や反発の声を受けて頓挫すると、NO.2に責任転嫁するようなことがあります。

NO.2が社長の与り知らないところで勝手に始めたことなら事情は異なりますが、社長とNO.2で話し合って決めたことを実行しようとしているところで、梯子を外されるような状況ではNO.2も頑張りようがありません。

④労いや感謝の言葉をかけない

日々、NO.2は社長の考えに基づいて、その実現化に苦心しています。優れた人材と見込んで肩書や給与面での待遇にも配慮した。けれども、NO.2も実現化にあたっての課題や苦労がないはずはありません。そんなNO.2を見ながら、その働きに労いの言葉をかけないばかりか、成果が出た時にも感謝の言葉もかけない、そんな社長がいます。

提供した待遇に対して、結果を出すことは当然のこと。必要以上に会話をする理由もない。ビジネスですから、そうしたドライな考え方もあるかもしれません。けれども、そこはNO.2も人間です。社長からの気遣いがあるかどうかで、忠義心や信頼関係にも大きく影響してきます。

⑤コミュニケーションを取らない

社長は忙しいものです。出張や人付き合い、時間をかけて検討している事案に集中していることも多いはずです。

けれども、忙しさにかまけてNO.2との会話も少なく、メールでの報告や連絡にも一切返信をしない。大事なことだからこそ報連相をしていたり、判断を仰いでいる場合もあるでしょう。

重要だと思われることに対しての反応もない、会話も少ない。それでは、信頼関係も揺らぐでしょうし、案件も停滞します。

その結果、NO.2が社長の指示を待たずに勝手にやらせて頂きますということになってもおかしくありませんし、何らの報告も上がってこない状況になったりします。

⑥情報共有しない

なにからなにまで情報を共有せよとは言いません。けれども、社長と話し合って決めた事柄に関しての重要な方針変更や新規の取組みなどがNO.2に伝わっていないと、NO.2としてはどんな気持ちになるでしょうか。

なぜそんな大事なことを自分に言ってくれないのだろうかと不信感に繋がってしまいます。

自分が聞かされてもいないことに精を出す訳にはいきません。

NO.2にも現場を指揮しているプライドもあります。こうしたことが度重なると、信頼関係にひびが入っても致し方ない状況になります。

⑦意見を聞かない

社長も人間ですから判断を間違ってしまうこともあります。それに対して、意見を述べても全く聞き入れてもらえないのでは意見を言ってもどうしようもないという諦めの気持ちになるでしょうし、失敗することがわかっていても黙っているでしょう。

結果として、NO.2は社長のご機嫌伺いのイエスマンに成り下がるか、信頼関係がなくなり退職を選ぶこともあります。

自分の周囲をイエスマンで固めている社長は、裸の王様でしかありません。正しい情報もなく、意見も聞けないのであれば、判断を間違えやすくなります。

⑧無理難題を丸投げする

優れたNO.2は物事を冷静、客観的に考え、計画性があります。そこへ社長の思いつきや感情的な優先順位で指示されると現場を指揮している立場としては困り果ててしまいます。

社長には絶対的な権限があります。そして指示をしたから自分の仕事は終わりと考える社長も多いです。後はよろしくで社長は済むかもしれませんが、ある意味、社長以上に会社の実状を把握しているNO.2としては実現可能性や課題がすぐ頭に浮かびます。

社長の判断が会社にどんな影響を及ぼしてしまうかわかりながらも、できないことを無理矢理でもやらなければならない。自分は良くても部下にはできないかもしれない。仕事の予定は大幅に狂い、現場には負担と混乱が起きてしまうかもしれません。

社長の命令が全てにおいて優先される訳ではないことも理解する必要があります。

⑨社長がやるべきことをしない

NO.2は社長の補佐が主な仕事です。NO.2に一定の仕事を任せるのは社長が本来やるべきことに専念できる環境を作り、維持することが目的なはずです。

にもかかわらず、社長が本来やるべきことをせずに楽になっただけで、戦略を考える訳でもなく、営業に行く訳でもなく、悠々自適な時間を手に入れるためだけにNO.2を酷使しているだけであれば、どうなるでしょうか。

NO.2も自分にはできないことをやり遂げる社長だからこそ、社長を尊敬し、信頼し、自らの職務を全うしようと思うのです。

その尊敬の念の源である社長にしかできない仕事を放棄して、優れた人材がいつまでもいてくれるはずもありません。

社長が本来やるべきことに取り組まないと会社は混乱し、課題ばかりが増えていきます。業績は良くならない、課題は常に先送られ、人の出入りが激しくなる、そういう会社になっていきます。

⑩働きに見合う報酬を与えない

NO.2もサラリーマンです。もらっている給料以上の仕事をやり続けることに疑問を持つのは当たり前です。NO.2の働きによって、会社と社長が潤ってもその見返りがないのではやる気も出ません。

理想的なNO.2として献身的な側面も大事です。けれども、仕事はボランティアではありませんし、働きに見合った対価もないのであれば、社長に消耗されるだけの仕事人生になってしまいます。

社長が非公開の自分の役員報酬は確保しておきながら、NO.2には滅私奉公を要請する。それではどんな人間もついていきません。

記事を書きながらずいぶん辛口な考えだと我ながら思います。NO.2が欲しいと思う社長の気持ちはよく理解できます。

一方で、現実にNO.2を長らくやってきて、NO.2というポジションのやりがいや苦労を知り尽くした立場から建設的なアドバイスをするとしたら、辛口にならざるを得ない部分もあります。

社長とNO.2の関係性で重要なことは、相互の信頼と尊重、共感できる価値観の共有です。

社長は絶対権力者ですから、誰かに遠慮なく自分の思うようにできる立場にいますが、事業活動は人の営みの集合体です。

NO.2に限りませんが、縁あって一緒に働くことになった人間に対して、社長という権限で何もかも好きにしていいという訳ではありません。

NO.2を育てられる社長には人間力が必要。頭がいいだけ、運が強いだけでは人はついてきません。

次回は優れたNO.2がいることが外部からどう評価されるかについてお伝えしようと思います。
最後までお読みいただきありがとうございます。

株式会社コナトゥスマネジメント 代表 平原 孝之

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