DREAMJOB Innovation Lab

若手士業イノベーション協会×DREAMJOB Innovation lab
NO.2の育て方⑬NO.2はゼネラリストを目指すべき理由



NO.2はどんなベクトルで経験や知識を積み上げていったら良いでしょうか。また、社長はNO.2をどんな人材に育てていくべきでしょうか。答えは絶対的にゼネラリストだと思います。

■NO.2の仕事はやるべきことが多く、広い

NO.2の仕事は会社全体の活動に渡るため、やるべきことが多く、広いものです。営業や人事労務、会計といったある特定の分野のことしかわからないといった人材にはNO.2のポジションは難しいのが現実です。

■問題解決ができても局所的対応でしかない

ある特定の分野において発生した問題を掘り下げていくと、当該分野以外のことが原因ということがほとんどです。原因が存在する分野についての一定の知識や経験がないとそもそも原因を特定することも、検討もできませんから、適切な問題解決ができません。解決できたと思っても、所詮はもぐら叩きの局所、対症療法でしかありません。

組織活動は、さまざまな部署による活動の集合体です。例えば正確なキャッシュフローを把握するために社内から情報を吸い上げても、そもそもその情報が正確でなければ正確なキャッシュフローの把握には至りません。なぜ正確な情報が上がってこないのか、そこで行き詰まってしまうともうお手上げです。

■知らないことが多すぎると経営幹部としては機能しない

一プレイヤーとして担当業務に従事するだけで良いのなら、その分野における専門性を高めていくだけで済みますが、会社全体のことを把握する立場であればそのために必要とされる知識、経験も多岐に渡ります。

特に人事労務に関して疎いのは経営幹部としては最もダメです。社員が働く環境を維持、改善するには労務に関する法律なども最低限理解し、遵守しなければなりません。

労働時間や働き方、評価制度などに無頓着なまま、精神論でただひたすら業績のために現場を疲弊させるだけの人間に指揮命令を執る資格はありませんし、労務トラブルなどの会社としてのリスクを増やすだけになります。

■経営は攻めより守りを強くが鉄則

守りが弱いのに攻めることばかりに注力する組織というものがあります。右肩上がりのイケイケの時には一気呵成に行かないといけない時もあると思いますが、社内体制が未整備のまま仕事量だけ増え続けると社員は疲弊し、クレームが大量に発生し、またその対応のためにさらに疲弊するなどの悪循環を生み出します。結果、売上だけは伸びているのに赤字、離職率が高いという会社も少なくありません。いわゆるブラック体質です。

攻めるためには先ず守りを固めるのは鉄則です。例えば社内体制の整備や人材育成といった守りを強くするためにはゼネラリストとしての能力が必須です。

自分の日々の仕事とは直接的に関係のないことと言えるのは現場で働く一般社員だけです。NO.2は経営幹部として常に情報収集を怠らず、会社として当たり前の対応をする。これもNO.2に必須の行動です。

■ゼネラリストへの大きな誤解

ゼネラリストと聞くと、中途半端な能力しかないイメージを抱く人も多いかもしれません。確かにある特定の仕事においては高い専門性が要求されるのは当然ですから業務に携わるのであればゼネラリストは活躍できないかもしれません。

けれども、トップをはじめとする経営層に必要な能力というのは尖った専門性ではなく、経営戦略やマネジメントといった広範な能力です。役割が異なれば、必要とされる能力も異なりますから、専門性という一点における比較はナンセンスですから、大きな誤解だと言えます。

決断力、問題解決能力、先見性、マネジメントスキル、胆力などはプレイヤーには求められませんが、経営層には必要な能力ばかりです。

■ポータビリティのあるレベルまで磨き上げる

ゼネラリストへの多くの誤解や否定は当該会社の人間関係に基づいた社内調整だけに長けた人材に対するものであることが大多数です。確かに、処世術ばかり長けて、本当の意味でのゼネラリストとしてのスキルでなければ価値は低いと思われても仕方がありません。

ゼネラリストはその会社だけで使えるものではなく、マネジメントや問題解決に必要な能力を他所でも通用するレベルにまで高めてはじめて本当の能力と言えます。

極論を言えば、他社から引き抜きの声がかかるくらいのレベルが理想です。

■社長と同じ目線で経営全体を見るために

経営全体を見るためには全体を俯瞰し、構造的に考え、対応できることが必要となってきます。社長としてもNO.2に任せられる範囲が狭くては、社長自身が楽になりませんし、NO.2というポジションを置く理由がなくなってしまいます。

ですので、NO.2自身の得手不得手は考慮しつつも、社長としてはNO.2にさまざまな経験をさせ、自らに不足している点を理解させる機会を与え、社長として考えるべきポイントというものを指導していくことが必要となります。

こうした積み重ねなく、社長もよくわかっていないことを突然、丸投げをしたり、指導を先送りにするようではいつまで経ってもNO.2人材には成長しません。

とはいえ、社長と言えど、全知全能ではありませんから、未知のことについてはNO.2と一緒にセミナーや研修に参加する、専門家と会う際には同席させるなど見聞を広める機会も提供しないといけないかもしれません。

社内だけで成長させようとしてもすぐに限界も来てしまいますし、それこそ社内でしか通用しない井の中の蛙のようなNO.2に育ててしまう可能性もあります。

NO.2には時間とお金をかけて、広い視野と知識を学ばせる機会を積極的に提供することが肝要です。

■まとめ

社長によっては、あえてNO.2というポジションを設置せず、事業ごとに責任者を立てる方式を採る場合もあるかもしれません。事業ごとの知識や経験を蓄積した人材を管理している方が楽というのも理由のひとつでしょうし、中には優秀過ぎるNO.2によって社長自身の存在の脅威になると恐れる場合もあるでしょう。

ただし、その状態を続けている限り、これまでの記事でもお伝えしてきたように裸の王様になりやすい、社長が余力を持って事業運営ができない、事業拡大を目指せないなどの弊害が生じることになるというのが、大袈裟に言えば歴史の証明でもありますし、会社の成長にとって大きなブレーキになることを併せてお伝えしておきたいと思います。

最後までお読みいただきありがとうございます。



株式会社コナトゥスマネジメント 代表  平原 孝之


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