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発行 あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
編集 DREAMJOB Innovation Lab

「出向者の給料はどう処理する?」

コラム読者の皆様こんにちは!
内山会計の内山でございます。

この記事では建設・土木業の方へ向けて、税理士・会計士としての立場から、専門的な知識・情報をわかりやすく解説してまいります。

年末年始は建設・土木業に関らず社内で新しいプロジェクトがスタートするなど、人・モノ・金の動きが活発になることも多くあるのではないでしょうか。今回はその中から出向者に対する税務上の扱いについて解説してまいります。

関連会社や子会社への出向など、他業種と比べ出向の多い建設・土木業界では特に押さえておきたい項目となりますので、ぜひ最後までお付き合いください。

出向形態の違い

「出向」と聞くと人気ドラマの半沢直樹を思い浮かべる方もいらっしゃるかもしれませんが、一口に出向と言ってもその形態は大きく「在籍出向」「転籍出向」と言う形に分けられます。

「在籍出向」の場合は籍を元の企業に置きながら、出向先の企業で働きます。つまり、元の会社との労働契約は維持したまま、出向先の企業とも労働契約を結び働くことになります。

一方「転籍出向」は上記と異なり、籍自体を出向先企業へ移すことになりますので、元の会社は退職扱いとなり労働契約は出向先企業とのみ結ぶことになります。

ここで税務上問題となってくるのが「在籍出向」の場合の給与処理をどうするか?
ということになるのですが、国税庁は法人税の基本通達として以下の様に定めています。

1.出向先法人が支出する給与負担金の取扱い
2.出向先法人が支出する給与負担金に係る役員給与の取扱い
3.出向者に対する給与の較差補埴の取扱い
4.出向先法人が支出する退職給与の負担金の取扱い
5.出向者が出向元法人を退職した場合の退職給与の負担金の取扱い
6.出向先法人が出向者の退職給与を負担しない場合の取扱い
7.出向者に係る適格退職年金契約の掛金等の取扱い
国税庁HPより抜粋(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kihon/hojin/09/09_02_09.htm)

基本通達により取扱いが示されている事項については、原則として取扱いどおり会針処理を行えばよいわけですが、実務上は留意が必要となることがいくつかありますのでそれぞれ見て行きましょう。

出向先法人が出向元法人に支払う経営指導料の中に出向者の給与負担金以外のものが含まれている場合

出向元法人が出向先法人に出向者給与負担金として請求する金額の中には、純粋な出向者給与以外に賞与の分担金、社会保険料負担金あるいは出向元法人の利益等が含まれている場合があります。
このような場合に出向先法人が支払額を一括して「経営指導料」として費用処理することは好ましくなく、それぞれの請求内容に応じた会計処理を行う必要があります。
また、出向元法人も受入額を一括して雑収入処理するのではなく、請求内谷に応じて、当該費用の戻入処理を行うべきです。
なお、出向先法人が負担する出向元法人に対する一定の利益はそれが相当の理由に基づくものであり、かつ適正な金額の範囲内のものである場合にのみ、税務上損金算入が認められ、そうでないときは出向先法人から出向元法人への寄付とされますので留意が必要です。

出向者給料及び賞与の一部または全部を出向元法人が負担する場合

出向者は出向先法人において労務の提供を行うのであり、出向者の給科及び賞与は、当然全額出向先法人が負担すべき性格のものです。

したがってその一部または全部を出向元法人が負担した場合は、負担部分につき税務上贈与認定されるのが原則ですが、法人税基本通達9-2-47により出向先法人との給与条件の較差補填の場合に限り出向元法人の一部または全部の負担が認められています。

つまり、給与水準に較差がないにもかかわらず、出向先法人と出向元法人との間の勝手な取決めにより出向元法人が負担した出向者給科及び賞与は当然税務上贈与とみなされます。

ただし実務では、さまざまな理由による出向があり、出向は名目的なもので出向後も実質的には出向元法人のための仕事を行っている場合等があります。
このような場合は出向元法人が出向者給料及び賞与の一部または全額を負担することに正当性が認められ、税務上も容認されるものと思われます。

しかしながら、このような例外的な出向契約は税務調査においてその実態を綿密に調査され贈与性の有無を判定されますので、あらかじめ負担根拠を明らかにしておき負担の正当性につき合理的な説明が行えるようにしておく必要があるでしょう。

出向元法人が出向者に対する給与の較差補頃する場合

法人税基本通達9-2-47が給与条件の較差補填に当る事例として例示している経営不振等で出向者に賞与を支給することのできない場合の取扱いは、出向者が出向先法人において役員となっている場合に実益のある取扱いですので特に留意が必要と恩われます。

出向元法人の従業員が出向先法人の役員である場合

出向者が出向先法人で役員になっている場合については、

①その役員にかかる給与負担金の額についてその役員に対する給与として出向先法人の株主総会、社員総会またはこれらに準ずるものの決議がされていること。
②出向契約等においてその出向者に係る出向期間及び給与負担金の額があらかじめ定められていること。

のいずれにも該当する場合、出向元法人が支出するその役員に係る給与負担金の支出を出向先法人におけるその役員に対する給与の支給として取り扱い、法人税法34条の規定が適用されることとなっています。

また、従来役員賞与は株主総会での利益処分として処理されていましたが、会社法の施行に伴い「役員賞与に関する会計基準」(企業会計基準第4号 平成17年11月29日企業会計基準委員会)が制定されましたので、役員賞与についての会計上の処理はこれに従って行うことが必要となります。

今回のまとめ

建設・土木業は他業種と比較しても「出向」での労働が多い業界であると言えるでしょう。労働者を守るためにも、会社自体が正しい経理処理を行っていく必要がありますので、今回のコラムを参考に出向元・出向先とも経理処理の参考していただければ幸いです。

出向者の給料についてどのように処理したらよいか疑問に思われた方は、どうぞお気軽に当事務所までお問い合わせください。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

税理士法人内山会計 公認会計士・税理士 内山典弘

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