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発行 あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
編集 DREAMJOB Innovation Lab

「変わる。法人の社保と消費税」

コラム読者の皆様こんにちは!
内山会計の内山でございます。

この記事では個人事業主の方・小規模事業者の方へ向けて、税理士・会計士としての立場から、専門的な知識・情報をわかりやすく解説してまいります。

来年・再来年と法人の社保・消費税に対する制度改定があることをご存知でしょうか?
2022年10月より社保の適用が拡大され、2023年10月からはインボイス制度がスタートする予定です。

そこで今月のコラムでは『変わる。法人の社保と消費税』と題して、制度の変更点と注意点について解説してまいります。制度改定をご存知でなかった方も、どうぞ本コラムを参考に知識の一つとして覚えておいていただければ幸いです。

2022年10月から社会保険適用拡大

まずは社会保険の制度改定について見て行きましょう。
冒頭お話したように、2022年の10月より社会保険の適用範囲が拡大されます。これにより、今まで対象外だった企業や従業員であったとしても社会保険の適用対象となります。
改定ポイントは次の2点です。
①以前より小規模な企業(従業員数が常時100人超)も対象になる
②勤務期間が短い(2か月超)労働者も対象になる

現行では人員規模500人超企業が対象でしたが、規模が100人超に引き下げられ、さらに2024年10月には50人超に引き下げられます。企業規模の従業員数とは社会保険の被保険者数で判断します。

人数は月ごとに数え直近12か月のうち6か月で基準を上回ると対象事業所です。
また、短時間労働者の範囲は1年以上雇用の方が対象でしたが、2か月を超えて雇用していれば対象になります。

現行の短時間労働者の社会保険適用要件

現行での社会保険加入要件を満たす労働者とは、
①週の所定労働時間が週40時間(フルタイム勤務)の労働者
②所定労働時間がフルタイムの4分の3以上(多くは30時間以上)労働者
が加入者とされていました。

2016年4月より従業員が一定数(500人)を超える企業の短時間労働者にも適用されるようになりました。この際に大手スーパーなどではパートさんへの社保加入手続きなど多大な労力を強いられたという経緯がございます。
さらに、先述の通り適用対象は2022年10月から100人超企業とされ雇用期間も2か月を超えて雇用すれば対象となります。
一部上場の大企業ではなくとも、パート従業員を多く抱える企業であれば今から準備が必要と言えるでしょう。

短時間労働者の適用条件は、
①所定労働時間が週20時間以上あること
②雇用期間が1年以上であることが見込まれること(2022年9月まで)
③賃金月額が88,000円以上であること

例えば9時~16時(時給1,000円・休憩1時間・勤務時間6時間)のパート従業員の場合。
週4日のシフトでパートに出てもらったとすると、
6時間×4日=24時間。
1,000円×24時間×4週間(1カ月)=96,000円
となりますので、社保への加入対象となってしまうというわけです。社保加入は従業員にとってメリットの様にも見えますが、配偶者の扶養に入りたいケースなど加入を希望しない方もいらっしゃいます。また、企業としても社会保険料の負担が大きく発生する場合もございます。
では、制度改定に対してどのように対応して行ったらよいのでしょうか?

企業への影響と対応策

企業において一番大きな影響は社会保険料の負担増加です。
仮に月額10万円のパートが10名いたとして新たに負担となるのは年額で約185万円です。
社会保険料の納付は法人税と違い赤字でも発生し、尚且つ毎月支払う必要がありますので、費用を早めに考えて計画しておく必要がありますね。

さらに、この先加入となる労働者に対して、対象者になることを説明する必要があります。半年前など早い段階からの説明が良いでしょう。加入を希望しない方には労働時間の変更が必要です。または社員転換等雇用形態の変更もあるかもしれません。
社保に加入しバリバリ働きたいという従業員から見れば将来の年金額が増えメリットと感じるケースもあることでしょう。

加入を希望する方・しない方それぞれへの対応。社保費用へ向けての資金計画。
今の内からできる対策としては上記2点となりますので、早めの備えをおススメ致します。

インボイス制度とは?

2023年(令和5年)10月1日よりインボイス制度というものがスタートします。インボイス制度とは適格請求書等保存方式というものを指しますが、適格請求書には登録番号(インボイス番号)というものの記載が必要です。

制度開始後は適格請求書が無いと仕入税額の控除が出来ません。仕入税額の控除が出来ないということは、受け取った消費税から登録番号の無い事業者へ支払った消費税は控除できなくなってしまうということになりますので、恐らく多くの事業者が「適格請求書発行事業者」の登録申請をすることになりますが、問題なのは免税事業者です。

免税事業者でも消費税は請求してよいが…

課税売上が1000万円以下の法人・個人事業主は免税事業者となり、消費税の請求は出来ますが、納付の必要はありません。
これを逆手に取られ取引先より、「消費税の納税が無いんだからその分安くしてよ」と買いたたかれてしまうケースもあることでしょう。

これを防止するために消費税転嫁対策特別措置法という法律がありますが、そのガイドラインにおいては、免税事業者であることを理由にした消費税転嫁を制限する買い叩きをしてはならない、とされていました。課税事業者のみならず、免税事業者にも、消費税を転嫁請求する権利があることが、ここでも確認できます。

これはインボイス制度が始まったとしても変わることはありません。免税事業者であっても消費税の請求はこれまで通り可能です。しかし、免税事業者はインボイス番号を取得することが出来ません。

既述の通りインボイス番号を持たない事業者から受取る請求書等は、適格請求書ではないので、その受取人においては原理的には仕入税額控除が出来ません。
ただし、経過措置として、制度開始後3年間は80%控除可能、次の3年間は50%控除可能とされています。

そうすると心配なのは、「当初3年間においては、転嫁消費税は8%にしてくれ」「次の3年間では、5%にしてくれ」「その後は、消費税転嫁は控えて欲しい」という要請が跋扈しそうな気がします。

こんな時こそ転嫁Gメンの活躍を期待したいところですが、消費税転嫁対策特措法は、2021年3月31日をもって、失効となっています。

免税事業者はどうしたらよいのか?

制度をまとめると、
・適格請求書が無いと相手が税額控除できず困るケースがある
・免税事業者はインボイス番号を取得できない
・税額控除を受けるためには適格請求書が必要となる

「消費税払うほどの売り上げが無いし、取引先も何も言ってこないからまあいいか…」
と思っていても、時間が経つとどうなるでしょう?

上図をご覧ください。
図右側フリーランスの男性はインボイス番号を取得していません。200万円+消費税で納品した物を、中央の会社は50万円上乗せし、250万円+消費税で図左側の会社へ販売しました。

中央の会社は
受け取った消費税=25万円
支払った消費税=20万円
ですので、25万円-20万円で5万円だけ消費税を納税すれば済むはずです。

しかし、適格請求書を受け取っていませんので、税額控除が出来ず受け取った消費税をそのまま納税することになってしまいます。経過措置がある間は目を瞑ってくれるかもしれませんが、その後はどうなるでしょうか? 

図右側の男性に「適格請求書でお願いします」と依頼してくることは容易に想像できることですね。仮に男性が対応できないとなると、よほどの信頼関係がない限り取引を打ち切られかねません。

これではまるで、「免税事業者は制度開始までにインボイス番号を取得せよ」と当局に言われているようですね…。
免税事業者がインボイス番号を取得すると、課税事業者となりますので消費税の納税が必要になってきます。経理上の手間も増えますし、場合によっては税負担も増えることになるのです。

制度のスタートまではまだ時間がありますので、現在免税事業者の方はご自身の事業計画について見直してみる必要があるのかもしれません。また、取引先との関係についてもより強固なものとすべく動いていく必要があると言えるでしょう。

今回のまとめ

制度改定は税金に限らず毎年様々な分野でやってきます。いち早く情報をつかみ、どのように対応して行ったらよいのかを検討することも会社を守る重要な仕事です。

税金・社会保険・補助金など会社運営を行って行く上で知っておいた方が良い制度改定は多くございますので、お困りの際はどうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

税理士法人内山会計 公認会計士・税理士 内山典弘

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