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発行 あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
編集 DREAMJOB Innovation Lab

土木業の出張費

コラム読者の皆様こんにちは!
内山会計の内山でございます。

この記事では建設・土木業の方へ向けて、税理士・会計士としての立場から、専門的な知識・情報をわかりやすく解説してまいります。

読者の皆様は月に何回くらい“出張”をしていますか? 建設・土木業は現場調査等出張の多い業種でもあると思いますが、その経理処理はどのように行っているでしょうか。
そこで今回のコラムでは『建設・土木業の出張費』と題して、出張にまつわる旅費や食事代の経理処理方法と、関連して現場調査費はどこまでを工事原価へ含むのか? ということを解説して行きたいと思います。ぜひ最後までお付き合いください。

出張にかかる費用

先述の通り、現場調査やご挨拶・顔合わせ等他業種と比べ建設・土木業は出張の多い業種であると言えます。上図の様な国内出張の場合を想定すると、どのような費用が出張には必要となるでしょう。
・交通費
・食事代
・宿泊費
・手土産代
ざっと思いつく限りこのような費用が発生するかと思います。手土産代が接待交際費に当たることは容易に想像がつくと思いますが、それ以外の費用について社員への精算も含め読者の皆様はどのように行っているでしょうか?
一つずつ見て行きましょう。

交通費

出張費の大部分を占めることになる交通費ですが、一般的には会社が鉄道や航空機のチケットを前もって用意し従業員へ手渡すケースが多いです。
チケットの手配が間に合わず、従業員に立て替えてもらうといったケースも存在すると思いますが、そういった場合では領収書を取得してもらい、後日実費精算を行います。

会社で定める『出張旅費規程』にもよりますが、タクシーの利用は緊急時以外認めていないケースが多く、グリーン車の利用に関しては管理職以上または部長職以上などポジションによって区分けされているケースが多く見られます。

いずれの場合でも実費精算が基本となる費用ですので、後述する宿泊費とは異なった性質を持つ費用と言えるでしょう。

宿泊費

宿泊費に関しても交通費同様事前予約又は立替精算が多いと思いますが、中には『出張旅費規程』を活用して宿泊費も含んだ出張手当を支給している会社もあるようです。

例えば1泊2日の国内出張を行った際、一般職員は一律1万円の出張手当を支給するという規定があったとします。宿泊費はこの1万円の中から捻出してもらうことで、会社側の経費精算は簡略化され、差額が発生した場合でも手当として支給したものですから、従業員のポケットマネーとして処理してしまうことが可能です。

税金の話をする際によく登場する“社会通念上” 妥当な金額で、一般職・管理職・役員ごとに金額を分けて設定しているのであれば、上記のような簡略化した処理も可能となりますので、出張経費の実費精算に手間がかかっている会社であれば宿泊費も含んだ『出張旅費規程』を導入してみるのも良いでしょう。

食事代

食事代は原則自己負担となりますが、福利厚生の一環として食事代を会社側で負担する場合下記のような条件を満たせば経費として処理することが可能です。

役員や使用人に支給する食事は、次の二つの要件をどちらも満たしていれば、給与として課税されません。

(1) 役員や使用人が食事の価額の半分以上を負担していること。
(2) 次の金額が1か月当たり3,500円(消費税及び地方消費税の額を除きます。)以下であること。
(食事の価額)-(役員や使用人が負担している金額)
 この要件を満たしていなければ、食事の価額から役員や使用人の負担している金額を控除した残額が給与として課税されます。

なお、上記(2)の「3,500円」以下であるかどうかの判定は、消費税及び地方消費税の額を除いた金額をもって行うこととなりますが、その金額に10円未満の端数が生じた場合にはこれを切り捨てることとなります。
国税庁HP(https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/gensen/2594.htm)より抜粋
2021年10月25日17:30アクセス

これは「食事手当」として支給する場合の話になりますので、建設・土木業の現場においてお弁当を支給するといった場合であっても同様です。

一方で出張時のみ食事の手当てをしていくという考え方であれば、先述の『出張旅費規程』を活用することが有効です。あくまで“出張手当”として従業員に支払ったものですので、後は従業員がどのように使おうが、会社としては支払った金額が経費となります。

便利なように見える『出張旅費規程』ですが、規定を作るうえで「どこからが出張の範囲か?」を明確にしておくことが重要です。例えば、私の事務所のある愛知県豊橋市から名古屋市まで出かけることを出張と呼んでも良いと思いますか?では、東京に行くことは? 前者はとても出張と呼べる距離ではありませんね。

一般的に片道の移動が100キロを超える場合を出張と扱っている会社が多いようですので、規定を作られる際の参考にしていただければ幸いです。

現場調査費はどこまでが工事原価か?

建設業会計ならではの考え方として「工事原価」というものがございます。先述の出張経費も現場調査を兼ねたものであった場合、これら費用はどの範囲まで工事原価に含めたら良いのでしょう? 現場では目に見えない費用でもありますので、その基準について知っておきましょう。

工事原価の範囲は?

工事収益(完成工事高)に対応する原価にはどの範囲までの原価を含めるべきかについては、法人税基本迎達2-2-5が規定しており、受注のために直接要した費用を含むこととしております。これは会計的に見ても全く妥当です。すなわち工事施工そのものの原価だけではなく、その工事を受注するために受注確定前に直接要した費用も含むとしているわけです。

建設会社は工事受注のための活動を常に実施しており、これが営業部門の目的です。この営業活動を実施するためもろもろの費用がかかるわけです。このように工事を受注する前に支出した費用のうち、特定の工事を受注するために直接要した費用は工事原価とし、残念ながら受注に至らなかった場合などその他については、販売費及び一般管理費とし、期間費用として処理するわけです。

したがって、工事受注のため直接要した費用とは何かが問題となります。
これは特定の工事について入札指名があったこと等工事出件が明らかとなり、その特定の工事を受注するための費用であると理解するのがよいと思います。支出する費用と受注活動の目的となっている工事との関係が直接的に認識できることとなった以降に発生する原価が当該工事の原価として処理される調査費用であるということです。

今回のまとめ

社長自身が出張に係わる費用は実費精算の場合を除き、どんぶり勘定になってしまっているケースも少なくありません。
工事原価となるのか否か? 出張の手当てとして金額は妥当か? 移動手段・宿泊施設は妥当か? 等、細部にわたってチェックしていく必要があると言えるでしょう。

よくある勘ちがいとして、関係者との親睦旅行は“出張”ではありません。交際費として処理することになりますが、その旅行自体が事業とどのように関係しているのかを証明する必要がありますので、誰とどこに行ったのか? くらいは最低限記録しておくクセを付けておきましょう。

コロナの新規感染者も落ち着いてきましたので、「そろそろ旅行でも」と考えている経営者も多いと思いますが、「どこまでが仕事でどこからがプライベートなのか」は社長自身が一番よく分かっていることだと思います。正しい経理処理は仕事とプライベートのきちっとした線引きにも繋がりますので、本コラムを参考にしていただければと思います。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

税理士法人内山会計 公認会計士・税理士 内山典弘

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