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発行 あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
編集 DREAMJOB Innovation Lab

建設・土木業の外注費と給与

コラム読者の皆様こんにちは!
内山会計の内山でございます。

この記事では建設・土木業の方へ向けて、税理士・会計士としての立場から、専門的な知識・情報をわかりやすく解説してまいります。

建設・土木業ではいわゆる一人親方の方に仕事を手伝っていただくことも多いかと思います。この場合の人工代(人件費)は外注費となりますが、場合によっては給与として処理しなければならないケースも存在します。

そこで今回は「建設・土木業の外注費と給与」と題し、注意すべきポイントや外注費・給与の判断材料について解説してまいります。適正な会計処理を行うということは会社を守ることにもつながりますので、どうぞ最後までお付き合いください。

外注費と給与の違い

上表は外注費・給与の違いについて表したものです。
仮に同じ金額をそれぞれの方式で支払った場合を考えると、外注費の方が社会保険料の会社負担分が無いことと、消費税が課税仕入れ(支払う外注費の中に消費税も含まれているという扱いになるため、会社が納付する消費税が少なくなる)となることから、給与として支払う場合と比べ有利であることが分かります。

したがって、支払う側からすれば法定福利費も無く、煩わしい源泉徴収も必要なく、その上消費税も抑えることが出来るため、外注費として人件費を計上した方が何かと都合がいいのです。

そのため建設・土木業に係わらず、「外注費」として処理したがる経営者は非常に多く存在しますし、実際に「外注」として働いている方も多くいらっしゃいます。では、実際にどのくらい会社負担の金額が変わってくるのでしょうか。

実際にどのくらい金額に違いがあるのか?

月40万円の人件費を外注費・給与でそれぞれ計算してみると次のようになります。

外注費の場合
40万円の中に消費税として4万円が含まれているので、その分納付する消費税が減る

給与の場合
給与とは別に64,577円の社会保険料分を会社が負担することになる。
消費税は含まないので外注費の様に課税仕入れとはならない。

同じ40万円の人件費を支払った場合でも、給与として支払うと社会保険の会社負担が大きな金額として発生します。また、社会保険の手続きや所得税の源泉徴収、年末調整も必要になりますので、金額に表れて来ないものとして事務処理の手間もございます。

他方、外注費は社会保険の負担もありませんし、煩雑な事務処理も必要ありません。その上、消費税を削減することも出来ますので、会社にとっての負担は給与と比べ少ないと言えるでしょう。

外注と給与の判断材料

人件費を支払う側からすればメリットの大きい外注費扱いですが、どんな人件費でも外注費として処理して良いわけではありません。国税庁より『大工、左官、とび職等の受ける報酬に係る所得税の取扱いについて(法令解釈通達)』という文章が出されていますのでこれを元に判断基準を作っていきましょう。

 (1)他人が代替して業務を遂行すること又は役務を提供することが認められるかどうか。

(2)報酬の支払者から作業時間を指定される、報酬が時間を単位として計算されるなど時間的な拘束(業務の性質上当然に存在する拘束を除く。)を受けるかどうか。

(3)作業の具体的な内容や方法について報酬の支払者から指揮監督(業務の性質上当然に存在する指揮監督を除く。)を受けるかどうか。

(4)まだ引渡しを了しない完成品が不可抗力のため滅失するなどした場合において、自らの権利として既に遂行した業務又は提供した役務に係る報酬の支払を請求できるかどうか。

(5)材料又は用具等(くぎ材等の軽微な材料や電動の手持ち工具程度の用具等を除く。)を報酬の支払者から供与されているかどうか。
出典:国税庁HP(https://www.nta.go.jp/law/tsutatsu/kobetsu/shotoku/shinkoku/091217/01.htm

コラムスペースの関係上すべての事例を取り上げることは避けますが、代表的なものとして上記引用文章の(4)を取り上げてみましょう。
外注費として処理するということは事業主(一人親方)と「請負契約」を結ぶことになります。契約している事業主は工事が完成しなかった場合のリスクも含めて背負う必要がありますので、一般的に請負契約の場合は期限までに納品出来ない場合報酬の支払いを受けることは出来ません。しかし、給与(雇用)として労働しているのであれば、労務の提供をした限り給与は支払われることになるのです。

決められた時間働けば報酬が支払われるのか、決められた仕事を完成させないと報酬が支払われないのかには大きな違いがありますので、時間給や日給で支払っている場合は外注費と認められない可能性が高いでしょう。

また、事業主は請負金額も自身で計算し会社側へ請求することになります。要するに会社の人間(従業員)ではない立場で仕事をすることになりますので、使う道具や材料も当然自分で用意する必要があるのです。(上記引用文章の(5))

外注費として申告していたものが税務調査によって否認されてしまうと、消費税や源泉所得税、社会保険料が過去に遡って請求されるケースもございますので、金額的なメリットだけで安易に外注費として申告することは避けたほうが良いでしょう。

今回のまとめ

外注費に関する取り扱いは先述の通りある程度の判断基準・判断材料が示されてはいますが、実務上調査が入った場合は「総合的な判断」とされるケースが多いです。

毎月固定の金額を支払っていたり、通勤手当を支払っていたりする状態で「外注」と言っても否認される可能性が高いですが、働き方の多様化もあり、どこまでが「雇用(給与)」でどこからが「外注」かの判断基準は昔に比べ難しくなってきたように思います。
また、会社側にとってメリットの大きい外注ですが、報酬を受け取る側からすれば先々の事も考えると充実した社会保険への加入を望んでいる方もいらっしゃることでしょう。

仕事を頼む側・受ける側双方が納得した上で労働環境を整え、正しく経理処理して行くことが会社を発展させることにも繋がっていくのではないでしょうか。

外注費・給与の線引きで悩まれた場合はどうぞお気軽に当事務所までご相談ください。

最後までお読みいただきありがとうございました。

税理士法人内山会計 公認会計士・税理士 内山典弘

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