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発行 あいおいニッセイ同和損害保険株式会社
編集 DREAMJOB Innovation Lab

医療保険は必要か?

コラム読者の皆様こんにちは!
内山会計の内山でございます。

この記事では一般の方へ向けた金融・税務の役立つ豆知識を、税理士・会計士としての立場から、わかりやすく解説してまいります。

今回は懇意にしている生命保険営業の方より伺ったあるお話を皆さんにも共有したいと思います。「自身の考えや置かれている立場により勧める商品が異なる」というのは営業上よくあることだと思いますが、生命保険業界では“医療保険”の販売について2種類の考え方があるそうです。

医療保険に加入している方も、加入を検討されている方も知っておいて損の無い知識となりますので是非最後までお付き合いください。

医療保険とは?

医療保険は生命保険会社により違いはありますが、一部の病気を除いて健康保険証を使って行った入院・手術に保険金が支払われますので、その幅広い保障範囲と入院・手術のリスクをカバーできる保険として大変人気があります。TVCMやネット広告でも各社より盛んに宣伝されているのですでに加入している方も多くいらっしゃることでしょう。
ちなみに、令和元年度に生命保険文化センターが行った「生活保障に関する調査」によると、医療保険の加入率は73.1%となるそうです。

加入率から見ても人気が高い保険であることはわかりますが、日本は皆保険制度を取っています。ということは、一般的な会社員の方であれば病院にかかった費用の自己負担は3割となるわけです。先述の通り、健康保険証を使って行った入院・手術に保険金が支払われますが、すでに健康保険証という社会保険に加入している我々にとって医療保険は本当に必要なものなのでしょうか?

医療保険必要派の立場

・自由診療
・先進医療
・差額ベッド代
・入院に関連する食費や交通費

上記の費用は保険証で賄うことが出来ません。中でも高額となる自由診療や先進医療はTV番組などでもよく紹介されていますのでご存知の方も多いのではないでしょうか。実際に発生する費用は治療内容により異なりますが、ガン治療で有名な重粒子線治療は300万円ほどかかるようですので、自身の財産から支出するには大きな痛手となってしまいます。

差額ベッド代とは個室や4床以下の部屋などを希望する場合に発生する費用のことです。自らが希望していなくとも大部屋が空いておらず、すぐにでも入院の必要があるという状況になったら、かかってくる可能性もある費用ですので注意しておきたいものです。実際の費用は病院により異なってきますが、数千円~数万円まで様々です。また、入院関連費用は見逃されがちですがこれも細々とかかってくる費用となります。

以上の事から保険証だけでは入院の費用に対して備えることは難しいことが分かります。これらをカバーするために医療保険は役に立つものですが、気になるのは毎月の保険料ですね。実際にある保険会社の商品で試算したところ30歳男性で1日1万円の入院給付金が支払われるタイプで先進医療もカバーしたものとなると、月額3,400円ほどでした。

月3,400円で入院に備えられるわけですし、1日1万円の保険金をもう少し下げればその分保険料も下がるわけですから、自身の予算と望む保障のバランスを考えたプランを勧められれば、加入を前向きに検討される方も多く存在することでしょう。

医療保険不要派の立場

健康保険証では一カ月に支払う医療費が一定額以上となった場合に後で払い戻される高額療養費という仕組みが存在します。

上表の区分(ウ)はよく例として取り上げられることの多い区分となりますが、標準報酬月額28万~50万円の方であれば、自己負担額が高額になったとしても、毎月約9万円の自己負担で済むことが分かります。

ということは仮に1カ月入院したとしても一般的な収入の方であれば治療費の自己負担分は9万円ほど。プラスして入院関連費用と病室によっては差額ベッド代が発生することになります。
対して月々の医療保険料は約3,400円です。30歳で加入した方が80歳まで生存するとして、3,400円×12か月×50年=204万円の保険料が支払総額となります。

1カ月入院ということは1万円×30日=30万円
商品によって手術保険金の支払額は異なりますが入院日額の20倍程度の商品が多いようです。すると1万円×20=20万円

1カ月入院し、手術を受けた場合の保険金は50万円ほど。
対して自己負担額は9万円+その他費用(差額ベッド代や入院関連費)

一見すると得するように見えますが、生涯で支払う保険料総額は204万円です。
1カ月入院するという大病を4回経験してやっと元が取れる計算になります。こうなってくると「加入しない方が得なのかな…」と思う方も多くいらっしゃることでしょう。実際の保険営業の現場ではこのような話をした後、「無駄になる可能性が高いのだから、医療保険に回すお金を積立に回しませんか?」と勧められることもあるそうです。

結局どちらが得なのか?

医療保険必要派と不要派。どちらの意見も納得できるところ、そうでないところがあるように思えます。確かに保険証だけでは対処できない費用もありますし、保険証だけで足りてしまう可能性も否定は出来ません。

ただし、あくまで“保険”ですので、「起きたら金銭的に困ることになるからそのために備える」という基本は変わりませんので、入院・手術時の費用に不安がある方や自由診療・先進医療を受けたいという希望がある方は加入を検討されると良いでしょう。また、自営業者の方であれば一般的な会社員と比べ収入減少時の保障(傷病手当)がありませんので、医療保険は必要になるでしょう。
逆に大企業にお勤めの方であれば福利厚生が充実しており、社内で加入できる団体保険の保険料も安いことから、独自で医療保険へ加入する必要が無いことも存在します。

つまり、医療保険加入を単純な損得だけで判断せず、自身の置かれている状況を熟慮し、情報を集め慎重に判断していくことが大切です。

今回のまとめ

立場や意見によって要不要が変わってくるというのは医療保険に限らずあらゆる分野で多く存在するものです。今回は一例として医療保険を取り上げましたが、特に金融商品は売り手の言い方ひとつで買い手に伝わる情報は限定的なものとなる場合も多く存在します。

既述の通り情報を集めることが重要ですが、情報を集めるだけでなく「なぜその商品がいいと思ったのか?」を自身で考え直すことも同じくらい大切なことであること考えます。間違った選択をしてしまった時に助けてくれる人はいませんし、選択したのは自分自身であることから誰かのせいにも出来ません。

保険に係わらず金融商品を誰かに勧められた時には、売り手の立場・考え方、なぜ勧めてくるのか? “今”の自分にとって必要か否か? を常に頭に入れ話を聞くようにすることを強くおススメいたします。

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

税理士法人内山会計 公認会計士・税理士 内山典弘

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